2017年04月

4月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:4005
ナイス数:75

ゴシックとは何か―大聖堂の精神史 (ちくま学芸文庫)ゴシックとは何か―大聖堂の精神史 (ちくま学芸文庫)感想
大開墾運動のさなか、人々が失われた聖なる「森林」を求めて愛したのがゴシック建築、そして聖母(ノートルダム)である。彼らの惜しみない献金と権力者たちの出資があり、ゴシックは大きく発展したが、宗教改革の時代には軽蔑され、18世紀末の復権まで長い迫害の時代が横たわっている。ゴシックの特徴は「異種の面が排除しあうことなく混在している」点にあり、例えば合理と非理性、異教的なものや地域的なもの、複数の時代の建築様式などが平然と共存している。(229)区別・線引きを好む16世紀の合理主義には受け入れ難かったのだ。
読了日:04月04日 著者:酒井 健
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年感想
これが初めての春樹長編作品。先入観に反して、哲学書に見られる一見単なる言葉遊びかと思われるような難解な文章も、荒唐無稽な世界観もない。台詞等は確かに私自身の個人的な「現実」には則さないものの、ストーリーが予想よりも現実に根差していた。(ファンによれば、その点本作と『森』は例外的らしい)明らかにされぬままになった問題が多い割に、すっきりと纏まっている印象を受けた。また『日出る国の工場』の時も書いたが、比喩表現が詩的かつ的確で胸を打つ。ちなみに本作も杏さんの紹介で興味を持った本。
読了日:04月10日 著者:村上 春樹
マイ・ロスト・シティー (村上春樹翻訳ライブラリー)マイ・ロスト・シティー (村上春樹翻訳ライブラリー)感想
他館から『グレート・ギャッツビー』が届くまでの繋ぎとして。滑らかで心地よく、先を読みたいと引き込まれる文章で、通奏低音のように横たわる寂寞感、孤独感も好みだ。しかし読後感はなぜだか「とりあえず読み終わった」という感じで、強く印象に残ったものが特にない。自分にとって、今、読むべき本ではなかったのかもしれない。「残り火」「氷の宮殿」「失われた三時間」が好き。
読了日:04月10日 著者:フランシス・スコット フィッツジェラルド
はじめての短歌 (河出文庫 ほ 6-3)はじめての短歌 (河出文庫 ほ 6-3)感想
音や品詞の数などの論理よりも、詩らしいニュアンス、全体の雰囲気への言及に重きを置いている。文章の様子がややエッセイに近いのはそのためだろう。詩歌の添削は批判されやすいが、本書は逆に「改悪例」を挙げることでその問題を回避している。素人目にも「ダメな歌」なのが明らかで面白い。ちなみに本書は解説者によれば「ビジネス書」だそうだが、本編を読んでいる間は全くそのようには感じなかった。解説は最後についているから強烈な印象を残すが、あくまで他人の意見である。引っ張られすぎないようにしたい。
読了日:04月11日 著者:穂村 弘
短歌はプロに訊け!短歌はプロに訊け!感想
歌集というものは、面白い歌がいくつも載っていていいのだが、せっかちなので「早くたくさん読みたい」という気持ちが抑えられず、ひとつの歌を充分に味わう前に次に進んでしまいがちである。本書は次のテーマに移る前に数ページの批評対談が入るので、ほどよいペースで読むことができた。穂村氏が『はじめての短歌』よりも詳細に、音数など短歌の原則を語っている。その割に彼が評価する歌に原則に反しているものが多いのは、それらがあえて原則を破る価値のある優れた歌であったからなのだろう。お気に入りはすず氏、本下いづみ氏、ねむねむ氏。
読了日:04月14日 著者:穂村 弘,沢田 康彦,東 直子
本当はちがうんだ日記本当はちがうんだ日記感想
書店にてぱらぱら覗いて「あだ名」を読み、あまりの面白さに一人でずっとニタニタしてしまった。帰って読み返してもやはり面白い。どこを取っても言い訳がましく、ものすごくめんどくさい。エッセイから浮かび上がるのは情けない人物像なのに、不思議な魅力に溢れている。「エッセイ」というジャンルをあまり読んでこなかったのだが、著者のエッセイならば全て読んでみたい気がする。
読了日:04月14日 著者:穂村 弘
穴 HOLES (ユースセレクション)穴 HOLES (ユースセレクション)感想
小学校高学年〜中学生向けの児童書。絶望的と思える状況なのに主人公がまっすぐ進んで行くのは、不運と一緒にひいひいじいさんから受け継いだ強さなのだろうか。ゼロがいなければ、その強さは発揮されなかったような気もする。今回初めて知った著者だが、米国では大人気の児童書作家で、日本でも英語学習のお供として親しまれているらしい。もう一、二作読んでみたい。
読了日:04月14日 著者:ルイス・サッカー
バッハの生涯と芸術 (岩波文庫)バッハの生涯と芸術 (岩波文庫)感想
バッハは存命中、作曲家としてのみならず演奏家や教育者としても尊敬を集めたが、流行に符合しなかったためか大衆の人気はさほどではなく、死後は殆ど忘れ去られていた。広い再評価は死後約80年、メンデルスゾーンによる公演まで待たねばならなかった。そんな中でバッハがいかに素晴らしい音楽家であったかを熱心に宣伝していたのが本書の著者フォルケルである。自身も音楽家であるため、かなり具体的な内容になっている。大衆向けというよりは、音楽を解する人々がバッハをよく知らないのを「勿体ない」と感じて教えているような印象を受けた。
読了日:04月15日 著者:J.N. フォルケル
カラマーゾフの兄弟〈第1巻〉 (岩波文庫)カラマーゾフの兄弟〈第1巻〉 (岩波文庫)感想
一台詞の長さが常識の範囲内だからか『罪と罰』よりも読みやすいが、やはり誰がいつどうしたのか、台詞では誰が誰に喋っているのかなど、振り返りつつ読まなければすぐに話を見失う。半分ほど読んだところで知人にあらすじを尋ねられ、一体なにを語らんとする物語なのか、ストーリーすらも未だ掴めていないことに気づいて愕然とした。それにしても本作は、続きを読みたいと思わせる魅力に満ちている。ただし冒頭に解説を置くのは心底勘弁してほしい。
読了日:04月22日 著者:ドストエーフスキイ
女子の人間関係女子の人間関係
読了日:04月25日 著者:水島広子
文体練習文体練習感想
一年半ほど前に読んだ筒井康隆の『残像に口紅を』もそうだったが、文章を書くこと自体を実験にしてしまった本というのは非常に興味深い。エンデの『はてしない物語』も「物語」を問うている点で構造的に近いかもしれない。もっとこういう種類の本を読んで見たいが、どうやって探せばいいのだろう……。 本書は訳者を単に「訳者」とするのが申し訳なく感じるほど、翻訳に依るところが大きい。日本語に依存する親父ギャグを外国語に訳すのは難しいだろうが、言葉と文の変奏曲たるこの作品には全編にわたって同じ困難が付きまとうからだ。
読了日:04月27日 著者:レーモン クノー
新装版 ハゲタカ(上) (講談社文庫)新装版 ハゲタカ(上) (講談社文庫)感想
知人が好きだと言っていたので読んでみたが、なるほどすごい。経済に弱い私のような人が読んでも面白いし、勉強になる。勉強というのも、用語を知れるという類のものだけではない。どのように金が動くのかが、理論ではなく人間の活動を見ることで感じられるのだ。経済小説といえば池井戸潤を想起するが、ウチとソトの区別が明白なイメージが(あまり読んだことはないが)ある池井戸作品に比べて、本作は外資系ファンド、銀行、ホテルの三つの視点をそこそこ公平に淡白に描いているので、それぞれの事情や思惑に着目しやすい。
読了日:04月29日 著者:真山 仁
大聖堂 (村上春樹翻訳ライブラリー)大聖堂 (村上春樹翻訳ライブラリー)感想
村上春樹への先入観を払拭しようシリーズ第三弾。『多崎つくる』で村上氏の文章は好きらしいと分かったが、どうも文学作品の趣味は合わないらしい。先日読んだフィッツジェラルドも、今回のカーヴァーも、「他人の身に降りかかった出来事」という感じが強く、あまり響かなかった。訳による文体が良いので立ち止まらずに読み進められたが、「あまり立ち止まる場所がなかった」とも言えるのである。とはいえ「ささやか…」「大聖堂」はかなり良く、「コンパートメント」「列車」は一気に転換する終盤が強く印象に残った。
読了日:04月30日 著者:レイモンド カーヴァー

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