2019年

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2019年の読書メーター
読んだ本の数:25
読んだページ数:7049
ナイス数:248

ゴシックとは何か―大聖堂の精神史 (ちくま学芸文庫)ゴシックとは何か―大聖堂の精神史 (ちくま学芸文庫)感想
再読。久々に読んだが本当に面白い。どうも気に入らないらしいものに対し、ここまで露骨にしなくても思うほど辛口な酒井氏。以前読んだ頃はむしろそれが小気味よかったのだが、再読までの間にケルン大聖堂に惚れ込んでしまったので、「最も生命力がない大聖堂」「死せる石塊」というくだりに差し掛かり、好きな本なだけにショックを受ける私であった。しかもこの一例でドイツのゴシックリヴァイバルそのものを一刀両断である。やはりフランス贔屓のドイツ嫌いなのか?いずれにしてもあんまりだあ。
読了日:01月11日 著者:酒井 健
海外で恥をかかない世界の新常識 (集英社文庫)海外で恥をかかない世界の新常識 (集英社文庫)感想
再読。今回は横着をせず、逐一地図で位置関係を確認したり、各国の公用語がどういう見た目をしているのかを調べてみたりと、寄り道をしながら丁寧に読んだ。『世界の新常識』という陳腐なタイトルは相変わらず気に入らないが、最低限知っておくべき戦争、年号、革命などがコンパクトにまとまっていて良書である。旅行の思い出など身近な情報を余白に書き加えていくことで、より面白い本になると思う。
読了日:01月12日 著者:池上 彰
緋色の研究【新訳版】 (創元推理文庫)緋色の研究【新訳版】 (創元推理文庫)感想
再読。数年前より英国ドラマ『SHERLOCK』のファンで、原作を数冊買ってあったのだが、あまり読めていなかった。先日ロンドンでロケ地巡りをした、その追い風に乗って今度こそ完走したい。 本作は後半が始まるなりベーカー街は跡形もなく消え失せ、男がなぜ殺人を犯すに至ったのかが語られる。主役二人を目当てに『ホームズ』を読んでいる身としては、ホームズ無し、ワトソン無し、おまけにロンドンに代わり私の苦手とする荒涼としたアメリカが舞台ときて、ここを読むのはややしんどかった……。
読了日:01月14日 著者:アーサー・コナン・ドイル
四人の署名【新訳版】 (創元推理文庫)四人の署名【新訳版】 (創元推理文庫)感想
再読。内容が新鮮なのでてっきり初読と思っていたら、読了登録してしっかり感想まで書いてあった(笑)「六マイルほどテクる元気はあるかい?」…ホームズの突然調子っぱずれになる語彙にも慣れてきた。本作の挿絵は『緋色の研究』よりも人物のイメージに合っていて好みだ。 前回は米ユタ州にあった事件の発端が、今回はインドにある。古びない名作とはいえ、あからさまな人種差別のオンパレードには時代を感じる。特に「アンダマン諸島の先住民」は一瞬たりとも人間として扱われることがなく、百科事典の記述にはぞっとさせられる。(128)
読了日:01月15日 著者:アーサー・コナン・ドイル
石川くん (集英社文庫)石川くん (集英社文庫)感想
なんだろう、何度読んでもページをめくるたびに笑い転げていた二年前よりも、なんだか冷静に読み返した。啄木の歌はいいなあ。より身近でよっぽど読みやすい言葉で書かれている「現代語訳」よりも心に染み入る気がするから、ことばは不思議だ。 本書の大部分を占める石川くんへのメッセージと短歌も勿論笑えるのだが、同じ枡野氏の手による巻末の「石川くん年表」は、凡人でも面白がって読める貴重な年表だ。
読了日:01月15日 著者:枡野 浩一
回想のシャーロック・ホームズ【新訳版】 (創元推理文庫)回想のシャーロック・ホームズ【新訳版】 (創元推理文庫)感想
ホームズ四作目。『冒険』に比べて話が複雑化し、幕引きもすっきりしないものが増えた感がある。後半の数作品と『株式売買店員』が面白かった。最終編は解説にもあるようにあまりに唐突すぎる。モリアーティが出てくる話がどのように終わるのかをどこかで聞きかじっていたので、彼への言及なしにページ数が減っていくのに戸惑った。飽き飽きしたドイルが一刻も早くホームズを「処分」してしまいたかった、その焦燥感のようなものすら感じさせる慌ただしい編。これで次巻はどう始まるのか?まだ手元にないのが悔しい!
読了日:01月20日 著者:アーサー・コナン・ドイル
世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)感想
文庫で再読。穂村エッセイは大方そうなのだが、読んでいると「やれやれ、この子はまったくもう」というオカン的な気分と、まるで自分のことを全て見透して書かれてしまったような気分が同居を始めるので、何度読んでも変な読後感になる。母性愛と自己愛を同時に感じると言ったら流石に大袈裟だろうか。「好き」でも「愛してる」でもなく、「ファンである」よりもむしろ「愛おしい」という表現が一番しっくりくる、それが穂村弘。笑
読了日:01月21日 著者:穂村 弘
バスカヴィル家の犬 (創元推理文庫)バスカヴィル家の犬 (創元推理文庫)感想
ホームズ五作目。『SHERLOCK』で一番のお気に入りエピソードの原作にあたるので大変楽しみにしていたし、こちらも目下一番好きな作品になった。ホームズの不在により、いつも以上に読者を謎の中に取り残したまま話は進んでいくのだが、薄暗くじめっとした風景描写の不気味さ、魔犬、見えない監視者、怪しげな数組の男女など、ワトソンらが感じていた先の見えない恐怖を共有するようでハラハラした。特に「監視者」のくだりは正体を予め知っていたにも関わらず、それを暴きにいくワトソンの鼓動と殺した息遣いが聴こえるようだった。
読了日:01月28日 著者:アーサー・コナン・ドイル
ドイツ語エッセイ 笑うときにも真面目なんです (音声DL BOOK)ドイツ語エッセイ 笑うときにも真面目なんです (音声DL BOOK)感想
再読。ドイツ人通訳者が日本語で書いたエッセイを、ドイツ語に訳し戻して対訳的に掲載したもの。一年半前の初読時には、左側を読む日が近いとは思ってもみなかったなあ…と何やら感慨深い。著者の思う「ドイツ人あるある」が時に自虐的な表現を交えてユーモラスに紹介されていて面白い。とくに表題作の輝きたるや。「カーニバル会議」という名称へのツッコミ、わざわざ笑いどころをお知らせするファンファーレ、「これから面白いことを言うぞ!」と宣言してから本で「勉強」したジョークを語るサラリーマンなど、ドイツ人にも大ウケであった。
読了日:01月28日 著者:マライ・メントライン
シャーロック・ホームズの復活 (創元推理文庫)シャーロック・ホームズの復活 (創元推理文庫)感想
六作目。短編集として『冒険』と同様に面白い。前々巻で死んだと思われていたホームズがワトソンのもとに戻る。タイトルは『帰還』『生還』など複数あるようだが、彼が「生還」したのは物語が始まる三年前の話であり、ベーカー街の名探偵ホームズが『復活』する、という本書の訳の方が私にはしっくりくる。 第一編「空屋の冒険」では、普段ならば内から外を見るばかりだった221Bを通りの反対側から見守るという景色の変化が、闇と埃の中で息を潜める非日常感をよりスリリングなものにしている。いわば特別編だろうが、本書一番のお気に入りだ。
読了日:02月06日 著者:アーサー・コナン・ドイル
恐怖の谷【新訳版】 (創元推理文庫)恐怖の谷【新訳版】 (創元推理文庫)感想
ホームズ七作目。『緋色の研究』と同じパターンで、後半から仕切り直し、閉鎖的な集団に関する前日譚がアメリカを舞台に始まる。始めこそ勘弁と思ったが、これがとても面白く、途中から『ホームズ』を読んでいることさえ忘れかけるほどのめり込んだ。しかしそれにしても、連載で読んでいた当時のファンたちは少しかわいそうだ。 前後編共に「ジャック」の正体にまつわるサプライズがある。後半のものはあまりに劇的だったので、種明かしの行にぶつかってから数秒思考停止した。幕切れはあっさり。モリアーティが表立って出てくることはないのか?
読了日:02月07日 著者:アーサー・コナン・ドイル
小さなトロールと大きな洪水 (講談社文庫)小さなトロールと大きな洪水 (講談社文庫)感想
約四年振りの再読。小説のムーミンはここまで児童書然としていただろうか、という印象。礼儀正しいムーミン親子、実は理想郷とも言えないお菓子の国、親切が親切を呼ぶ「おこったコウノトリ」とのやりとりなど、明らかに(あからさまに)子供の情操教育を念頭において書かれている。中紙が上質で広告がいろいろついているのは、一冊の文庫本にするには短すぎたからか。本作が初めて世に出た当時も、そのペラペラな小冊子はあまり相手にされなかったそうだ。
読了日:02月07日 著者:トーベ・ヤンソン
新装版 ムーミン谷の彗星 (講談社文庫)新装版 ムーミン谷の彗星 (講談社文庫)感想
再読。人やそれを取り巻く世界がいかにちっぽけで吹けば飛ぶような弱い存在かを吹き込まれ、ムーミンとスニフが不安を抱くところから物語が始まる。あと四日で全てが壊れてしまうかも、という中にも小さなロマンスや楽しいダンスパーティがあり、物語は冒険のわくわくを失わない。それを支えているのは子供たちの「うちにさえ着けば大丈夫」という無根拠かつ確かな心の支えであり、その要はママへの絶大な信頼であろう。息子の帰還を疑わず、口笛まで吹きながらケーキを用意して待っている。『洪水』に続き、「母は強し」の権化のようなママだ。
読了日:02月07日 著者:トーベ・ヤンソン
新装版 たのしいムーミン一家 (講談社文庫)新装版 たのしいムーミン一家 (講談社文庫)感想
再読。一般的なムーミンのイメージの源泉はこのあたりなのだろう。『洪水』『彗星』では前面に出ていた大災害と死への不安は鳴りを潜めているし、嵐や大時化の描写はあるにしても、同二作のように彼らの命を脅かす自然の脅威というよりは、冒険のロマンといった風情である。数年前の夏にフィンランドを訪れたが、本当に日が長いので寝付くのが大変なほどだった。明るく涼しい北欧の夏の夕べ、澄んだ空気の中でパーティを楽しむ賑やかなムーミン谷連中の様子が目に浮かぶ。
読了日:02月08日 著者:トーベ・ヤンソン
新装版 ムーミンパパの思い出 (講談社文庫)新装版 ムーミンパパの思い出 (講談社文庫)感想
再読。「個性的なキャラクター」というと使い古された表現だが、口煩いだけと鼻つまみ者のヘムレンおばさんや、かわいそうな目にあってばかりの善良なエドワードなどを見ていると、すべてのキャラが人の持てるあらゆる個性のデフォルメのようだ。著者は優れた人間観察能力の持ち主だったのだと思う。特に印象に残ったのはパパの「精神的危機」のくだり。自信家でいつも素晴らしいことを思い描いていそうなパパにでさえ、親友が王様の引き抜きを受けて去ってしまったような時、何もかも手につかず、うまくいかない心地で塞ぎこむことがあるのだ。
読了日:02月11日 著者:トーベ・ヤンソン
デンマーク語のしくみ《新版》 (言葉のしくみシリーズ)デンマーク語のしくみ《新版》 (言葉のしくみシリーズ)感想
ドイツ語に続き『しくみ』シリーズ二作目。8頁目、早々に現れる「デンマーク語の発音で唯一練習を必要とするであろう音がrの発音です」の時点で眉唾ものに見えるのだが……。「まずはローマ字読み」というのも、フランス語以上に綴りと発音の関係が複雑なデンマーク語の学習においてはほぼ通用しないのではないか。「例外」の説明は後からなされるのだが、学習のハードルを下げようとするあまり言い過ぎているような。初級文法に一通り触れた後、記憶の整理に読むのに適していると思う。
読了日:02月17日 著者:鈴木 雅子
ドイツ方言学―ことばの日常に迫るドイツ方言学―ことばの日常に迫る感想
ドイツの方言は大別して3種類。北の低地ドイツ語、中部ドイツ語、南の上部ドイツ語である。低地と中部の西側は「第二次子音推移」の影響が少なく、標準語のpf/fがp、tz/sがt、chがkに置き換えられる(というよりも諸方言が先にあり、標準語が変化後の姿であるという発想が必要である)。私はケルン(リプアーリ)方言に興味があるので、オランダ語や英語、スウェーデン語を絡めたこれらの地域の方言に関する記述が一番面白かった。また、ベルリンやライプツィヒドレスデンなど東の都市名の一部はスラブ語由来であるというのも驚き。
読了日:06月08日 著者:河崎 靖
マンガで教養【CD付】はじめてのクラシック (マンガで教養シリーズ)マンガで教養【CD付】はじめてのクラシック (マンガで教養シリーズ)
読了日:07月11日 著者: 
こころ (岩波文庫)こころ (岩波文庫)感想
何度目の再読だろう?このところ集中力を欠いていてなかなか本を読めなかったのが、ひょんなことから本書を手に取ってみたら驚くほど素直に読めた。 私と先生はなんの共通点も見出せないと言っても過言でないほど違う人生を歩んでいるのに、場面場面で漱石が抉り出して見せる先生の心の動きは私もよく知っているもので、毎度驚かされる。この作品を初めて読み込んだのは高校生の時だが、あれから何年も経って、今、先生がより近い存在になったかのように感じる。老後まで大切に読み返す作品になると思う。
読了日:11月11日 著者:夏目 漱石
本当はちがうんだ日記 (集英社文庫)本当はちがうんだ日記 (集英社文庫)
読了日:11月13日 著者:穂村 弘
Hygge - ein Lebensgefuehl, das einfach gluecklich machtHygge - ein Lebensgefuehl, das einfach gluecklich macht感想
『ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」の作り方』ドイツ語版。世界一幸福と言われるデンマーク人が大切にする概念"hygge"と、hyggeligなモノ、状態、アクティビティが紹介されている。居心地の良さがキモであり、典型的なのは揺れる蝋燭の明かりや薪の爆ぜる音、暖かな家の中で聞く嵐の音、手作りケーキと熱いコーヒー、毛布に包まっての読書、気のおけない友人とのキャンプ等々。 文法も単語も平易で、スタミナさえあればB2程度でスラスラ読める理想的な本。日本語では読まなかった類の本だが内容もデザインも気に入った。
読了日:11月13日 著者:Meik Wiking
英語多読 すべての悩みは量が解決する!英語多読 すべての悩みは量が解決する!
読了日:12月09日 著者:繁村 一義
Die Drei Koenige: Koeln-KrimiDie Drei Koenige: Koeln-Krimi感想
表紙にKöln-Krimi(ケルンのクリミナル小説)と明記されているとおり、ケルンを舞台にした刑事モノで、大聖堂やライナウハーフェン、フリューなど観光客にも馴染み深いスポットやケルン方言がしばしば登場する。旧正書法で書かれている(daß等)ようだが、移民の文法ミスをいちいち指摘する登場人物がいて、学習者としては嬉しい設計。先日のHyggeよりレベルが高く、はじめはしんどかったが、過去と現在が繋がって物語が加速し始めた頃から俄然読みやすくなった。
読了日:12月19日 著者:Paul Schaffrath
Harry Potter Und der Stein der WeisenHarry Potter Und der Stein der Weisen感想
ドイツ語版『賢者の石』。2年ほど前に買ってあったのをようやく読んだ。子供時代に邦訳を擦り切れるほど読んだシリーズなのも手伝ってか、読むだけなら辞書要らず、数日で完読でき、自信にも繋がってとても楽しかった。duzen/siezenの使い分けや、emporやgen等の文学的な表現の発見など、文学作品ならではのドイツ語の楽しみ方もあった。それにしても表紙絵のセンス……
読了日:12月22日 著者:J K Rowling
Atemlose Stille: OWL-KrimiAtemlose Stille: OWL-Krimi感想
ドイツの刑事モノ。事件を追う側のコンビが恋愛関係にあり、それが物語に絡む展開は本来好みではないのだが、それにしても面白く、展開も早いので今回は時間をあけずに読むことができた。途中で実は続き物の2冊目だと気付いたので、他の蔵書を片付けたら1冊目も取り寄せて読んでみようと思う。(この後も続きそうだがまだ発表されていない。)まだ通算4冊目だが、ドイツ語のペーパーバックを読むのに少し慣れてきた気がする。
読了日:12月29日 著者:Meike Messal

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