2015年

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2015年の読書メーター
読んだ本の数:110冊
読んだページ数:27120ページ
ナイス数:344ナイス

齋藤孝のざっくり!世界史齋藤孝のざっくり!世界史感想
歴史の授業は脱線話が多ければ多いほど興味をそそる。年号や事件名、人名などの細かな事柄については、生徒が授業で興味を持って勝手に調べて勝手に覚えてしまうようなものが、理想的な歴史入門の在り方だと思う。社会主義の不自然さを「自然の森の植物を全て引っこ抜いて、一種類の木を植えつけるようなもの」と喩えるのが面白かった。
読了日:4月16日 著者:齋藤孝
聖書を読む聖書を読む感想
聖書に親しんでいる両氏が知識を披露し、読者に向けて聖書を解説する本ではない。佐藤氏が神学界隈の一般的な見解などを語り、それに対して中村氏が突っ込んだ疑問点を挙げ、視点の違うお二人が時に意見を戦わせる「議論」になっていて、読んでいる方ものめり込んだ。現代エルサレム(の一部)におけるユダヤ安息日の話は特に面白かった。イエスが形式的な律法主義を批判するのも頷ける。
読了日:4月20日 著者:中村うさぎ,佐藤優
優しさと強さと―アウシュビッツのコルベ神父優しさと強さと―アウシュビッツのコルベ神父感想
「人間的な思考は、その基礎になる平和によってはぐくまれている」。アウシュビッツの絶望で大多数の人が心を失っていく中で、アンネやコルベは優しさや思いやりと言った人間的な心を持ち続けていた。『聖フランシスコの平和の祈り』はそれ自体が温かく大好きな詩だが、闇の只中で疲弊し絶望した人々を励ます文脈ではその力をより強く感じた。
読了日:4月21日 著者:早乙女勝元
人名の世界史 由来を知れば文化がわかる (平凡社新書)人名の世界史 由来を知れば文化がわかる (平凡社新書)感想
雑学として興味深かったが、「世界史」というタイトルには今一歩及ばない印象を受けた。
読了日:4月23日 著者:辻原康夫
読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門感想
速読か熟読か、自分の読書法としてどちらかを選択しなくてはならないような気がしていた。佐藤氏は「熟読する本を選び取るための速読」が必要なのだと書いて、二者択一という先入観を取り去ってくれた。教科書のやり直しはどうにも焦れったく感じてしまうが、長い目で見れば基礎を固めた方が効率が良いのかもしれない。
読了日:4月25日 著者:佐藤優
池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」感想
池上氏の噛み砕いた解説があまりにも明快なので、本当は解っていないのに理解しているつもりになっているような気がして、引用元である筑摩書房資本論』を手に取ってみた。案の定、見覚えのある箇所にも、自分で説明できない部分が多くあった。この本を傍らに置いて、ゆっくり挑戦していこうと思う。
読了日:4月27日 著者:池上彰
教皇フランシスコ教皇フランシスコ感想
教皇フランシスコのお人柄や立場、最近の教会の様子を大まかに知ることができる。教皇に関してはほぼイメージ通りだったが、イエズス会については全くの無知であったため新鮮に感じた。この方の時代にカトリックに触れることができて本当に良かったなあと常々思っている。
読了日:4月30日 著者:マリオエスコバル
小さなトロールと大きな洪水 (講談社文庫)小さなトロールと大きな洪水 (講談社文庫)感想
母は強し。ふわふわした天然系だと思っていたが、新しい住処や不在のパパを探して辛抱強く子供たちを引っ張っていくママは格好良かった。現在のムーミンとは随分雰囲気の違う挿絵も、見ているうちに可愛くなってくる(笑)
読了日:5月4日 著者:トーベ・ヤンソン
神学部とは何か (シリーズ神学への船出)神学部とは何か (シリーズ神学への船出)感想
日本でキリスト教がふるわない理由の一つとして、「キリスト教徒自身が教会を私的領域と考えてしまっている」ために「教会の人間関係が煩わしく感じられる」と述べられている。これは頷ける話で、日本の教会(特にプロテスタント)は内に閉じ、良くも悪くも「アットホームな教会」という雰囲気がある(気がする)。隣人との密接な交わりは大切なことだが、それがかえって人々を教会から遠ざけてしまうとしたら残念なことだ。
読了日:5月5日 著者:佐藤優
イスカリオテのユダイスカリオテのユダ感想
聖書を読み始めた頃はユダ贔屓でカイン派的な見方をしていたものだが、ユダは考えれば考えるほど、読めば読むほど分からなくなった。『駈込み訴え』『ユダによれば』を愛読し、本書では『ユダの弁護人』やインゲボルグ・ドレーウィッツの詩に心惹かれるあたり、私はユダに関しては文学の方が向いているのかもしれない。
読了日:5月5日 著者:大貫隆
バチカン・エクソシストバチカン・エクソシスト感想
かつてのユダヤ社会では、病は罪深さの証であると考えられ、病人は疎外されていた。イエスによる治癒の奇蹟は、声をかけ、触れて受け入れることで彼らを救う、精神的なものであった……とする説がある。現代まで続く悪魔祓いも、効果としてはこれに近いものなのではないか。但し最終章に触れられている通り、気軽にこれを行ったり、長期化させたりすることは、被術者にも危険を及ぼす可能性があるため避ける必要があると思う。
読了日:5月6日 著者:トレイシーウイルキンソン
新装版 ムーミン谷の彗星 (講談社文庫)新装版 ムーミン谷の彗星 (講談社文庫)感想
ムーミン第2弾。どんよりと重たい不安がのし掛かってくるような雰囲気のある作品で、どうにもできない巨大な脅威がゆっくり、しかし確実に迫りくる焦燥感に追い立てられる心地を体験した。最近までパペットアニメを上映していたのに、観に行けばよかったなあ。売店での勘定の辺りがよく分からなかった。 ところで、前作「洪水」とはずいぶん登場人物の雰囲気や言葉遣いが変わったと思ったら、訳者が違った。ちょっと叫びすぎ、どなりすぎな気がするが、ニュアンス的にどうだろう。
読了日:5月8日 著者:トーベ・ヤンソン
後世への最大遺物・デンマルク国の話 (岩波文庫)後世への最大遺物・デンマルク国の話 (岩波文庫)
読了日:5月11日 著者:内村鑑三
経済は世界史から学べ!経済は世界史から学べ!感想
もう一歩踏み込んで欲しいところで章が変わってしまい、物足りなく感じることが多かった。「糖尿病の患者が大食い競争に参加したようなもの」「病人がダイエットをするようなもの」など喩えが秀逸。
読了日:5月11日 著者:茂木誠
マックス・ヴェーバー入門 (岩波新書)マックス・ヴェーバー入門 (岩波新書)感想
『プロ倫』を読む前の入門として。 ヴェーバーの主張は西欧の近代的合理主義の素晴らしさではなく、その成功の故に合理主義は限界を迎えるという点にあった。ヴェーバー研究者の多くがキリスト教を受容した者だったため、先有傾向によってヴェーバーが合理主義の成功に大きく貢献したプロテスタント的精神を賛美しているのだと思い込んだのが、長年の誤読の原因だった。
読了日:5月16日 著者:山之内靖
世界史の極意 (NHK出版新書 451)世界史の極意 (NHK出版新書 451)感想
具体例を挙げつつ、歴史を多方向から眺め「目に見えない世界」にまで思考を広げることが勧められており、とても読み易かった。引用されているイギリスの歴史教科書は是非読んでみたい。しかし「イスラムのなかで、ムハンマドは最初で最後の預言者であり、ムハンマド以外に預言者はいません」(204)という記述は謎。確かに最後の預言者はムハンマドだが、総勢二十数名ではなかったか。私はクルアーンを読んだことがないが、佐藤氏は他の著作で邦訳の紹介もしていた気がする。私が文脈を読み違えているのだろうか?
読了日:5月17日 著者:佐藤優
哲学の原風景―古代ギリシアの知恵とことば (NHKライブラリー)哲学の原風景―古代ギリシアの知恵とことば (NHKライブラリー)感想
ソクラテス以前のギリシア哲学者について、平易な文章で説明されていて興味深く読めた。終章で紹介されているギリシア哲学の「論理性」を成立させた三要素が、ことごとく現在の日本とは正反対なのが面白かった。そんな国民性を気に入っているような、残念なような……。押さえるべきポイントを掴み切れたかというと、やはり全くの実力不足なのを痛感する。
読了日:5月20日 著者:荻野弘之
哲学思考トレーニング (ちくま新書 (545))哲学思考トレーニング (ちくま新書 (545))感想
身近で分かりやすい例を挙げての各主義の紹介や、議論におけるあるある話、読者に投げかける疑問など、飽きずに読ませる様々な工夫がされていた。特に前半、デカルトのあたりはかなり面白かった。 確かに最終的には「結局、何がどうだったの?」という感想を抱かずにはいられないが、このように思考するのが正しいという答えは存在しないし、それを決めようと試みること自体がこの本の主旨とは対立するのだろう。
読了日:5月25日 著者:伊勢田哲治
ギルガメシュ叙事詩ギルガメシュ叙事詩感想
歴史の授業の最初の最初で習ったギルガメシュ叙事詩。あんなに古い物語が、虫食いで日本語訳とはいえ実際に読めるなんて感慨深い。「ノアの箱舟伝説に影響を与えた(と思われる)洪水物語が登場する」と教えられたので、てっきりギルガメシュ本人が洪水を乗り越えるのかと思っていたのだが、違った。
読了日:5月30日 著者:月本昭男
人間失格【新潮文庫】 (新潮文庫 (た-2-5))人間失格【新潮文庫】 (新潮文庫 (た-2-5))感想
主人公の人間観は、なかなか本質を突いているように思う。太宰が聖書に親しんでいたこともあって、手記からは葉蔵の宗教的な思考の深さが見て取れる。にも関わらず、彼の人生は誰がどう見ても、決して(社会的に)善いものではなかった。堕落した人生を送る人を見る時、その人の内面まで否定したくなるのが普通だが、必ずしもそういう人が根っこから腐り落ちているとは限らないのではないかと思った。葉蔵は少なくとも私よりは余程深く、ものを考えて生きている。
読了日:6月1日 著者:太宰治
90分でわかるカント (90分でわかるシリーズ)90分でわかるカント (90分でわかるシリーズ)感想
90分もかからない、入門の入門くらいの読み易さだった。 カントがどのような人であったかというところから入って、後半では少し著作の抜粋に触れる。哲学書は難しい言葉がひたすら並んでいて、しかも分厚いために頭を抱えるのだが、この本では引用箇所が短く絞られているので、一文ずつじっくりと考えながら読めた。全体の長さに関わらず、哲学書とは本来こうやって読むものなんだろうなあ……心の余裕を持ちたい(笑)
読了日:6月2日 著者:ポール・スタラザーン
太宰治を読む―梅光女学院大学公開講座〈第45集〉 (笠間ライブラリー)太宰治を読む―梅光女学院大学公開講座〈第45集〉 (笠間ライブラリー)
読了日:6月4日 著者:
愛は「死んでもいいということ」愛は「死んでもいいということ」感想
アガペー!!!という雰囲気のタイトルだが、エロスとフィリアにも言及する。修道生活がエロスの愛によるもの、というのは驚きだった。前半はふんふんなるほど、という感じで読んでいたのだが、後半はしばしば心を揺さぶられた。
読了日:6月11日 著者:森一弘
アウシュビッツの聖者コルベ神父 (聖母文庫)アウシュビッツの聖者コルベ神父 (聖母文庫)感想
コルベ神父の本といえばアウシュビッツに大半のページを割いたものが多いが、これは生涯の伝記。修道院にてコルベは宣教に関する新しい意見を多く出し、しばしば疑問視されたが、決して「従順」の誓いを破ることはなかったらしい。正しい考えは、正しいが故に、無理矢理押し通さなくとも自然と受け入れられるものだ、ということだと思う。「聖性は、ぜいたく品ではなく、義務です。(217)」確かに、キリストのように生きるとは、そういうことなんだろうなあ……コルベはまさしくキリストのように生きた人だと思う。
読了日:6月14日 著者:マリアヴィノフスカ
ひつじが丘 (講談社文庫)ひつじが丘 (講談社文庫)感想
登場人物が皆、欠点や汚点を抱えているのがリアルで、人間は誰しも罪を持つというキリスト教文学の大前提がよく表れている。これがもし他の作者によるものだったら「登場人物が身勝手」などという一言で済ませてしまうような気がする。物語自体はあまり好みでないが、なぜか目を離せず一気に読破してしまった不思議な作品。絵画の場面は静かながらも劇的である。
読了日:6月16日 著者:三浦綾子
教皇ヨハネ・パウロ2世の詩―黙想ロ-マ三部作 (聖母文庫)教皇ヨハネ・パウロ2世の詩―黙想ロ-マ三部作 (聖母文庫)感想
ベネディクト16世による解説を読むだけでなんとなく感じるのだが、翻訳があまりよくない。詩に関しては、今度英訳を探して読んでみようと思う。
読了日:6月17日 著者:教皇ヨハネ・パウロ二世
教皇ヨハネ・パウロ物語―『聖母の騎士』誌22記事再録 (聖母文庫)教皇ヨハネ・パウロ物語―『聖母の騎士』誌22記事再録 (聖母文庫)感想
本書を読むまで、ヨハネ・パウロ1世についてはお名前と短い在位期間のことしか知らなかった。彼のエピソードは現教皇フランシスコを彷彿とさせる。 ヨゼフ・ヒコ(浜田彦蔵)のことも初めて知った。途中まではジョン万次郎によく似た体験をしているが、洗礼を受け、帰化してアメリカ国籍を持ち、通訳として帰国したそうだ。興味があるので、後日改めて調べてみようと思う。
読了日:6月18日 著者:水浦征男
アキレスとカメアキレスとカメ感想
唸りながら読んだ。絵本風でぱっと見は易しいが、中学数学すら怪しい私には難しい難しい。「文系人間」を名乗るのもおこがましい「理系じゃない人間」の私は、ご指摘の通りに「追いつけないなんてありえな〜い!」という発想をしてしまう……。限りなく1に近いが1未満である0.999…の話で、少しだけ理解が進んだ気がした。
読了日:6月19日 著者:吉永良正
20世紀言語学入門 (講談社現代新書)20世紀言語学入門 (講談社現代新書)感想
言語学に触れるのは初めてで、予備知識が一切ない状態で読んだためか、専門用語のオンパレードに目が回りそうだった。新しい分野に手を出す難しさを改めて実感したが、言語学への興味も湧いた。機会があれば、より入門的な本を読んでみたい。
読了日:6月23日 著者:加賀野井秀一
いのちの福音〈ペトロ文庫〉いのちの福音〈ペトロ文庫〉感想
「民主主義」「自由」の履き違えが起き、人権までもが投票で左右されている。人々の持つ倫理の物差しがずるずると悪へと引きずられつつあることへの警鐘を鳴らし、キリスト者には、時代に流されずに神からの正義を持ち続けるよう訴える。中絶を経験した女性に向けたメッセージが、決して迎合はしないが歩み寄り手を差し伸べることもやめないヨハネ・パウロ2世の姿勢を象徴していると思った。
読了日:6月30日 著者:教皇ヨハネ・パウロ二世
饗宴 (新潮文庫 (フ-8-2))饗宴 (新潮文庫 (フ-8-2))感想
ホップ(五人の話)、ステップ(ソクラテスの話)、ジャーンプ!(アルキビアデス乱入)と鮮やかに段階を踏んで面白さが増していく本編、言葉遣いに登場人物の個性を落とし込んだ翻訳、訳者による解説まで、余すところなく魅力的な一冊。長さもいい塩梅なので、所謂「哲学書」を読んだことがない、あるいは苦手な人でも取っつきやすいと思う。他の翻訳でチェックしておきたいところがいくつかあった。
読了日:7月4日 著者:プラトーン
神父燦燦―カトリック司祭58人に聴く神父燦燦―カトリック司祭58人に聴く感想
神との劇的な邂逅を果たした人もいれば、いつのまにか司祭になっていた人もいて、十人十色で面白かった。見知ったお名前もちらほら。「もし一人の人間によって、少しでも多くの愛と平和、光と真実がもたらされたなら、その一生には意味があったのである」いい言葉を知った。生きる意味を見失いがちな現代社会で、道標を立て直してくれる言葉ではないか。
読了日:7月6日 著者:カトリック新聞社
ムーミン谷の名言集ムーミン谷の名言集感想
温かくて、共感できて、でも時々はっとさせられる、哲学的な名言集。ムーミンらしい童話調の穏やかな言葉遣いもいい味を出している。「この、まるっきり未知で不安なことだらけの世界で、ひとつでも、よく知っているものが、ほっとするものがあるのは、ほんとうにうれしいことでした。(ムーミン谷の冬)」分かるなあ……。
読了日:7月8日 著者:トーベ・ヤンソン
一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)感想
ただ「好き」と言うと語弊があるかもしれないが、大変面白く、のめり込むように読んだ。この分厚い本を読む間じゅう、一方では困惑し、本を閉じてこの世界から離れてしまいたいと思いながら、他方では早く読み進めたいと一心不乱にページを捲っていた。前半で描かれている世界から、どうしても連想してしまう国がある。二重思考も、私は既に経験があるような……。『動物農場』といいこれといい、オーウェルの作品は個人的にヒットするようなので、次は『カタロニア讃歌』を読んでみたい。
読了日:7月11日 著者:ジョージ・オーウェル
死を笑う うさぎとまさると生と死と死を笑う うさぎとまさると生と死と感想
「死」という重いテーマを扱っているにも関わらず、佐藤・中村両氏の軽妙な会話でさらりと読ませる。脱線が多い。職務にドライな天使、ピタゴラ装置デブ専ルノワールなど、思わず笑ってしまうこともあった。小保方氏と首相に「詩人」という共通項を見出す佐藤氏の切り口は流石だ。
読了日:7月12日 著者:中村うさぎ,佐藤優
希望の資本論 ― 私たちは資本主義の限界にどう向き合うか希望の資本論 ― 私たちは資本主義の限界にどう向き合うか感想
一度挫折して積み中の『資本論』に再挑戦したくなっただけでなく、食わず嫌いだったピケティにも少しだけ興味が湧いた。資本論に関するピケティの返答を読み、自分は常にこういう噛み合わない返事をしているのではと不安になる。自分の専門外であっても、相手の提供する話題に的確に食いついていけるような、知識の土台を作りたいものだ。
読了日:7月14日 著者:池上彰,佐藤優
主よ、一緒にお泊まりください主よ、一緒にお泊まりください
読了日:8月4日 著者:教皇ヨハネ・パウロ二世
すべての人に心を開く (1980年)すべての人に心を開く (1980年)感想
まるで詩集のように頻繁に改行が入れてあるためか、あたたかな言葉の数々を一文一文味わいながら読めた。若者に向けた「あなた方はひとりだけではないでしょう。すべてのものたちがあなた方の味方となるでしょう。あなた方を愛し祝福する教皇もまた、あなた方の味方となるでしょう」というメッセージが特に心に残った。時折、訳に少し違和感を感じる箇所もある。
読了日:8月4日 著者:教皇ヨハネ・パウロ二世
肩ごしの恋人 (集英社文庫)肩ごしの恋人 (集英社文庫)感想
解説にある通り、確かに淡々としている。他の作者なら力を入れてドラマティックに展開させるような場面が、数行であっさりと片付けられていることも多く、テンポを掴めずに度々面食らった。ドラマ版の演出の方が好みかもしれない。
読了日:8月4日 著者:唯川恵
日本人のための「集団的自衛権」入門 (新潮新書 558)日本人のための「集団的自衛権」入門 (新潮新書 558)感想
TVで聞きかじっただけの知識で賛否を語るなど以ての外、という反省とともに読んだ。整理されていて読みやすかった。「概念の遊びをしたところで、日本の安全にもつながりません(135)」本当におっしゃる通りだ。ところで、日常レベルにまで落とした例え話は一長一短だと思う。イメージを伝えやすい一方で、正確さに欠ける。指定席券を持っていても、すでに「新幹線には乗らない」という先約があるなら、その座席にも座れない。指定席の例えは、「権利はあるが行使できない」状態を非難するには弱い気がした。
読了日:8月6日 著者:石破茂
ソクラテス以前以後 (岩波文庫)ソクラテス以前以後 (岩波文庫)感想
イオニア自然学、ソクラテスプラトンアリストテレスの4本立て。ソクラテスを中心にしながら、思想の変遷を辿っていく構成が面白かった。特に気に入ったのはアリストテレスの章。彼が神と神を希求する万物について明確に説明すればするほど、神の姿は「支え手である神」から遠ざかっていく。ギリシア哲学(頭脳からの要求)とキリスト教(心からの要求)の神理解を「対立」ではなく「互いに補い合うもの」とする本書は、両者の関係性についての新しい見方を示してくれた。
読了日:8月7日 著者:F.M.コーンフォード
やんごとなき読者やんごとなき読者感想
面白かった!淡々とした文体の中にシニカルなジョークが綺麗に織り込まれているのがオシャレ。知識(情報)を得る目的で本を読むのも勿論、悪くない。けれど時には「目的」や「効率」「勉強」を一度脇に置いて、「読みたい!」と感じた本を素直に読む時間を持つことも、自らの喜びのために大切だと改めて感じた。そんなわけで、私も数多の積読本を差し置いてこの本を手に取ってしまったことを嬉しく思う。
読了日:8月8日 著者:アランベネット
ニジンスキーの手記 完全版ニジンスキーの手記 完全版感想
1ページを読むのにここまで疲弊する本は久々だ。しかしこの手記は支離滅裂なようで、一貫性がある気がする。例えば「知性」と「感情」、「考える」ことと「感じる」ことの対立は幾度となく言及されている。「私は彼らにデッサンを何枚か見せた。感じてもらいたかったのだが、私は彼らが考えているのだということを感じた。だから彼らのことは諦め、心で泣いた」(294)きっとニジンスキーはこの手記についても、読者に「感じて」欲しいのだろう。私を含め、この本に頭を抱える読者の多くは、彼に言わせれば理性的ではないのかもしれない。
読了日:8月10日 著者:ヴァーツラフ・ニジンスキー
いま生きる「資本論」いま生きる「資本論」感想
佐藤氏の語りは読んでいて面白かったが、勉強と理解力の不足から、講座の目的である『資本論』の読み解きには至れなかった。いくつか紹介される講座参加者が提出したレポートのレベルの高さもあって、何かと自信を喪失させられる(笑)と共に、学習意欲を刺激される一冊だった。佐藤氏の著作では多くの本が紹介されるので、「いつか読みたい本」がどんどん増えていくのが困りものだ。
読了日:8月18日 著者:佐藤優
エリザベート―愛と死の輪舞(ロンド) (角川文庫)エリザベート―愛と死の輪舞(ロンド) (角川文庫)感想
個人的な作品解釈の補完というよりも、新たな解釈を提供されたような気がする。私はこの劇そのものが「毎晩毎晩」繰り返されているのだと考えていたため、長い裁判に終止符を打つための劇だったのかと驚いた。とにかく、二つの日本版エリザベートを知らない人が読んだら度肝を抜かれるだろう。折角のノベライズ、歌詞の引用でない台詞ももう少し読んでみたかった。
読了日:8月18日 著者:小池修一郎
甘い蜜の部屋 (ちくま文庫)甘い蜜の部屋 (ちくま文庫)感想
数ページで既に満腹になっているにも関わらず、ページを捲るのをやめられなかった。作者の紡ぐ文章に人を惹きつけてやまない魔性があるからこそ、彼女が描いたモイラにもこのような魅力があるのかもしれない。この類の小説は全く未経験だったので、読み終えた今も衝撃に打ちのめされている。
読了日:8月20日 著者:森茉莉
ハムレット (新潮文庫)ハムレット (新潮文庫)感想
恥ずかしながら、シェイクスピアをまともに読むのは初めてだった。はじめは登場人物の把握に苦労し、頻繁に人物一覧と本編を行ったり来たりしていたのだが、慣れてからは脳裏に舞台が立ち上がり、読み進めるごとに演劇が展開されているかのように感じた。また、性格描写の整合性よりも場面毎の劇的効果を重視することを説いた『シェイクスピア劇の演出』も興味深かった。シェイクスピア作品にはギリシアを扱ったものも多いようなので、是非読んでみたい。
読了日:8月20日 著者:ウィリアムシェイクスピア
ダ・ヴィンチ・コード(上) (角川文庫)ダ・ヴィンチ・コード(上) (角川文庫)感想
内容はほとんど忘れていたが、一応再読。初読当時はキリスト教知識が皆無だったので、主にスリリングな展開を楽しんでいたのだと思う。今回は基礎知識をかじってから挑んだためか、主人公のウンチクや謎解きの内容も大変興味深く感じられた。
読了日:8月21日 著者:ダン・ブラウン
ダ・ヴィンチ・コード(中) (角川文庫)ダ・ヴィンチ・コード(中) (角川文庫)感想
ティービングが語っている間、今にも敵が動くのではないかとハラハラし、追い立てられるように一気に読んだ。これまでの暗号は私には難題過ぎたが、古代文字の文章だけはラングドンよりも先に読めたのが嬉しかった(笑)
読了日:8月21日 著者:ダン・ブラウン
ダ・ヴィンチ・コード(下) (角川文庫)ダ・ヴィンチ・コード(下) (角川文庫)感想
最後の最後まで気が抜けない、抜かせない、飽きさせない巧みな構成で、ぐいぐいと引き込まれるまま一日で全編を読み通した。一晩置こうとしても、続きが気になって眠れなかっただろう。上巻、中巻では、明かされる新事実に感心してもぽんと手を打つに留めていたのだが、下巻には思わず声を上げたくなるような場面がいくつかあった。映画版と『天使と悪魔』、巻末に紹介されている参考書にも興味が湧いた。
読了日:8月21日 著者:ダン・ブラウン
すべらない敬語 (新潮新書)すべらない敬語 (新潮新書)感想
軽快な語り口で楽しく読めた。敬語は手段であって目的ではない。重要なのは、教科書的な「正しい敬語」を闇雲に覚えて使うことではない。言葉遣いをはじめ、表情、動作、外見、立場や状況などあらゆる要素を駆使して、相手に良い印象を持たれることである。確かに正しい敬語を使えるに越したことはないが、敬語さえ正しければ好印象、タメ口ならば悪印象を与えるという訳では必ずしもないことを、身近な例えで再確認した。
読了日:8月24日 著者:梶原しげる
走れメロス・おしゃれ童子 (集英社文庫)走れメロス・おしゃれ童子 (集英社文庫)感想
太宰中期の短編集。後期作品に慣れた目には新鮮なほどに、他者との結びつきが重視され希望の光を当てられている。『葉桜と魔笛』『新樹の言葉』は特に良かった。太宰の解釈による『カチカチ山』はなるほどリアリティーがある。読みながら、人間版と動物版が両方ともイメージできた。ところで、解説に「『灯籠』は(略)読んだあと味が一番いい」とあるが、個人的には『燈籠』こそが、一番モヤモヤした作品だった。
読了日:8月25日 著者:太宰治
老人と海 (新潮文庫)老人と海 (新潮文庫)感想
再読。場面転換や劇的な事件がほとんど起こらないにも関わらず、途中で飽きなかったことに、我ながら驚いた。読者に退屈を感じさせないのは、緻密で想像力を掻き立てる描写のなせる業だろう。
読了日:8月26日 著者:ヘミングウェイ
イヴの七人の娘たちイヴの七人の娘たち感想
基礎知識にも丁寧な説明があり、理系アレルギー持ちでも入り込めた。本書の主題である研究の内容そのものも興味深いのだが、サイクスという研究者の自伝としても非常に面白い。科学研究と言えば白衣に試験管に顕微鏡にラット、などという漠然としたイメージしか持っていなかったのが、本書を通して、彼らの行う研究がいかにワクワクに満ちた知的な大冒険であるかを知った。困難の末、ついに自説が認められたくだりでは、思わず涙が出そうになったほど。時間はかかったが読んでよかった。
読了日:8月28日 著者:ブライアンサイクス
冒険者たち ガンバと15ひきの仲間 (岩波少年文庫044)冒険者たち ガンバと15ひきの仲間 (岩波少年文庫044)感想
長い月日を経て再読。アニメは未見なので、挿絵にある写実的な動物たち、特に美しく妖しいノロイの姿が、活き活きと思い出された。読み返して、暴力による戦いの描写が思っていたよりもずっと短いことに驚いた。この物語のクライマックスは確かにイタチとの戦いだが、主題はあくまでも「冒険」「仲間」である、ということの表れなのだろう。本書を「児童文学」と呼んで大人たちから遠ざけてしまうのは勿体無いが、かといって呼ばずに子供たちから遠ざけるのも本末顛倒……と、何やら歯痒い想いである。
読了日:8月30日 著者:斎藤惇夫
日本の中でイスラム教を信じる日本の中でイスラム教を信じる感想
イスラーム教徒」と一括りにせず、一人ひとりの個を見てみれば、信仰のかたちも、それに対する想いも皆違う。当然のようで、普段は意識していないことだった。本書に言及されている通り、未知の文化に歩み寄ろうとする姿勢は広まりを見せている。少しの勇気を持って一歩踏み出せる人に私もなりたい。
読了日:8月31日 著者:佐藤兼永
ネットで「つながる」ことの耐えられない軽さネットで「つながる」ことの耐えられない軽さ感想
「ネットことば」を説明する序盤、英語化やSNSについて語る終盤は、共感するところが多く面白かった。しかし、結論の「個」「つながり」というくだりには理解が追いつかず、自分も読むことができない人々の一人なのだと改めて感じた。ネット断ちの難しさは、まさに「つながり」であるがために、勝手に離れられない点にあると思う。読書をやめても直接他人に迷惑はかけないが、EメールやSNSには大勢の相手がいるため、使用をやめれば支障を来し易い。不安に感じていても、完全に関係を絶つことは不可能なのがネットことばの恐ろしさである。
読了日:9月1日 著者:藤原智美
脳に悪い7つの習慣 (幻冬舎新書 は 5-1)脳に悪い7つの習慣 (幻冬舎新書 は 5-1)感想
好きな先生の授業は面白い。それが脳科学的に説明されていて、なるほど納得。重要なのは、脳のパフォーマンスは感情と密接に関係している、ということである。「気の持ちよう」と言えばまるで根性論のように聞こえるが、まさに気の持ちようで、脳の働きを飛躍的に上昇させることができる。始める前から「嫌い」「無理」「興味ない」と決めつける癖をやめることが、私の最重要課題だと感じた。
読了日:9月1日 著者:林成之
創価学会と平和主義 (朝日新書)創価学会と平和主義 (朝日新書)感想
インターホンを挟んでしか関わったことがなく、直接迷惑を被った経験もない。それにも関わらず、創価学会と聞くと眉間にシワが寄る。何も知らず、知りたいと思う機会もない。私は確かに思考停止の状態だった。本書はそれを解きほぐし、思考を始める手伝いをしてくれる。しかし、本書に述べられていることも一側面に過ぎないということを忘れてはならないと思う。創価学会に限らず、一冊読んで知った気になるのは、何も知らない以上の思考停止ではないだろうか。更に知ろうとし続ける必要がある。今回は読書メーターの感想欄からも多くを学んだ。
読了日:9月5日 著者:佐藤優
三浦綾子の世界―その人と作品三浦綾子の世界―その人と作品感想
全体的にまとまりのない印象があるものの、内容はどれも興味深かった。特に三浦綾子遠藤周作太宰治との比較が面白い。また、三浦作品のあらすじや引用が多いため、『積木の箱』『銃口』など、読んでみたい作品に出会うこともできた。「エロスの愛は、愛の名に値しない。」(33)という部分にだけは、言い過ぎではないかと違和感を感じる。
読了日:9月7日 著者:久保田暁一
光あるうちに―道ありき第3部 信仰入門編 (新潮文庫)光あるうちに―道ありき第3部 信仰入門編 (新潮文庫)感想
著者自身や知人の体験を中心に、現実的なトーンで書かれた信仰入門書。盲信的でない人がしばしば抱く疑問の多くが、本書を読むことで解消されると思う。人はどうせ死ぬのだからすべてが虚しいという考えに対する「食物は栄養となって、はじめて存在の意味があるのだが、どうせ便になるからと、便器の中に投げたのでは無意味である」という切り返しが非常に面白かった。
読了日:9月8日 著者:三浦綾子
古事記ゆる神様100図鑑古事記ゆる神様100図鑑感想
パラ見のつもりが案外時間をかけてじっくり読んでしまった。本書単体でも面白いが、実際に古事記やその解説書を紐解く傍に置いておけば、より一層楽しめると思う。
読了日:9月10日 著者:松尾たいこ
痴愚神礼讃 (中公クラシックス)痴愚神礼讃 (中公クラシックス)感想
痴愚神の恩恵によってこそ人間は幸福なのであり、痴愚でこそ人間なのだという、痴愚神自らの演説。一言で表せば「馬鹿万歳」。強烈な説得力があるため、読みながら自分が堕落させられていくのを感じた(笑)唯一の命綱は、言葉の端々からその博識を主張している、著者エラスムスその人だった。 立派とされる人々を皮肉るときに「ご連中は、第三天の高みに鎮座ましませるわけです。(略)他の人間どもを眺めて、これに憐れみをおかけくだされるのです」(156)など、くどい敬語表現がよく効いている。
読了日:9月11日 著者:エラスムス
全学連と全共闘 (平凡社新書)全学連と全共闘 (平凡社新書)感想
薄い本であるにも関わらず、一読に丸一日を要してぐったり。特に略語のオンパレードには苦労した。しかし寄り道のない淡々とした概説で、全体の大きな流れが分かったので、入門書として非常に良い選択をしたと思う。それにしても、当時を知らない人間にとってはまるでフィクションのようだ。
読了日:9月12日 著者:伴野準一
読むだけですっきりわかる日本史 (宝島社文庫)読むだけですっきりわかる日本史 (宝島社文庫)感想
旧石器時代から現代までを楽しく概観できるので、中高で習った日本史の復習だけでなく、より絞った学習への入口にもなりそうだ。丁寧な目次や重要語句の太字と索引、図など、整理するためのフォローが充実している。飛鳥〜江戸が特に面白かった。独特の文体と、明治以降、著者の意見が目立つ点は少し苦手。『日本地理』も読もうと思う。
読了日:9月14日 著者:後藤武士
ハプスブルク夜話―古き良きウィーンハプスブルク夜話―古き良きウィーン感想
フランツ・ヨーゼフや皇太子の話を読み、一般的な参考書と文学だけで作り上げてきた人物のイメージを崩された気がする。フロイトがチャウチャウ犬を溺愛していたというエピソードをはじめとする「医学の夜話」が特に面白かった。
読了日:9月16日 著者:ゲオルクマルクス
暴露:スノーデンが私に託したファイル暴露:スノーデンが私に託したファイル感想
警戒心を抱いた個人がグーグルやスカイプ等特定のサービスの利用を控えたところで、情報化社会の中にあっては無駄な足掻きに等しい。出荷される通信機器を押収し、データを流すための機器を仕込んでから出荷している、というくだりには目眩がした。このようなことをやっているのが一介の悪徳組織ならまだしも、それを糾弾すべき政府自身の管轄だというのだから、輝かしい情報化社会は既に根本から腐っているのかも知れない。
読了日:9月21日 著者:グレン・グリーンウォルド
ルーズヴェルト・ゲーム (講談社文庫)ルーズヴェルト・ゲーム (講談社文庫)感想
ひたすらに利益を追求し、そのためには手段を選ばないミツワ。「イズム」を重んじ、人を人として見ようと最後まで足掻き続けた青島。資本は前者を愛するかのように見えるが、必ずしもそうではなく、それらを超越する人間同士の繋がりがある。それは二社の経営方針にも、二野球部の戦い方にも、役員や監督の個性にも現れ、本書のテーマとして描かれているように思う。以前観たドラマ版との差異は多かったが、笹井専務が青島と対になる「老人」とされているのには特に驚いた。
読了日:9月22日 著者:池井戸潤
方法叙説 (白水Uブックス)方法叙説 (白水Uブックス)感想
教科書的なデカルト概説で「方法的懐疑」を知った時には、あらゆるものを疑ってかかる態度から、デカルトは悲観的な考え方をする人物であるという印象を受けた。しかし実際に読んでみると、彼は全てを疑わなければならないことへの失望よりも、唯一信じられる「思う我」への信頼、自信の方を強く持っているように感じられ、デカルトのイメージは一転して明るいものになった。また、彼の信仰にも驚かされた。デカルトに関する誤解はまだ多い気がする。本書の翻訳があまり肌に合わなかったので、他の訳で改めて読んでみたい。
読了日:9月26日 著者:ルネ・デカルト
古代の歴史ロマン4 ハンムラビ法典—「目には目を歯には歯を」含む282条の世界最古の法典古代の歴史ロマン4 ハンムラビ法典—「目には目を歯には歯を」含む282条の世界最古の法典感想
法律の内容そのものよりも、このような古い文字が解読され日本語に訳されていることに改めて驚き、感動した。訳文自体に関して言えば、代名詞が何を示しているのか不明瞭なことがあり時折混乱した。
読了日:9月30日 著者:飯島紀
星の王子さま (新潮文庫)星の王子さま (新潮文庫)感想
タイトルや表紙のイラストだけは昔から知っていたが、ようやく初読。聖書的な雰囲気を強く感じて驚いた(だからと言って、王子さまとイエスを結びつけようとは思わないが)。王さまのエピソードが気に入った。
読了日:10月2日 著者:サン=テグジュペリ
池上彰の「経済学」講義 ニュース編 覇権をめぐりお金が武器に池上彰の「経済学」講義 ニュース編 覇権をめぐりお金が武器に感想
石油の1章とリーマンショックの3章が特にためになった。最も印象に残ったのは総選挙解説のオファーの話(笑)。抜群の話題性という点で素晴らしい人選だと感心してしまった。 文章が平易なのに加えて、注釈や太字なども非常に親切。贅沢を言えば索引が欲しかった。
読了日:10月3日 著者:池上彰
日本人の英語 (岩波新書)日本人の英語 (岩波新書)感想
『東大教師が新入生にすすめる本』に度々登場していたので手に取った。日本人の陥りやすいミスや、文法上間違いではないが不自然な部分を指摘し、より洗練されたネイティヴの英語に置き換える。不適切な文章の例を読みながら、直すべき点を探すのも面白かった。 著者が日本語で「日本語が嫌い!」と叫んでしまったエピソードを読み、自分は英語学習と言いながら日本語世界から一歩も出ていなかった事実に思い至り反省した。かつて「えいご漬け」というゲームがあった。学習にまず必要なのは自分自身を英語世界に漬け込むことに違いない。
読了日:10月7日 著者:マーク・ピーターセン
沈黙 (新潮文庫)沈黙 (新潮文庫)感想
強い者、弱い者とは何だろうか。「弱い者」が踏絵を踏む痛みに耐えるのは、強さ故ではないのか。キチジローは人間には生れつき弱い者と強い者がいるのだと言うが、その分類は人間によるものであって、神ではない。始めキチジローの考え方に同調していたロドリゴが、終盤には「強い者も弱い者もないのだ」(294)と言っている通りだ。神が人間の分類に従って人間を苦しめたり救ったりするような存在ではないと気がついた彼が信仰を棄てたとは思えない。
読了日:10月8日 著者:遠藤周作
サルヴィフィチ・ドローリスサルヴィフィチ・ドローリス感想
自分の苦しみを「無意味」だと虚しく捉えるのは最も避けるべきことだ。苦難は神からの試練であるという考え方が好きだ。しかし本書で大きく扱われているキリストの十字架に与るという考え方は、自分のためではなく他人のための苦しみである。殉教者たちが持つ超人的な精神力に納得できなかったこともある。彼らには神の力添えだけでなく、このような苦難への理解があったからこそ、あの強さを貫くことができたのではないだろうか。
読了日:10月9日 著者:ヨハネ・パウロ二世
史的イエスと『ナザレのイエス』史的イエスと『ナザレのイエス』感想
タイトルに『ナザレのイエス』が入っているが、内容はベネディクト16世の著作について論じたというよりも、その出版をきっかけに史的イエスという研究を再考したという雰囲気だ。本書のトップバッター・佐藤氏の文章はいつも刺激的で、新しい視点を提供してくれる。
読了日:10月10日 著者:
子どもたちへの手紙―教皇ヨハネ・パウロ二世子どもたちへの手紙―教皇ヨハネ・パウロ二世感想
近現代には、特にアメリカで、イエスが子供たちに囲まれて笑顔で語っているというような絵が多く描かれるようになった。本書の最後に書かれた教皇が子供たちに語りかけた言葉を読むと、なんだかそのような光景が思い浮かぶ。 ところで、何歳くらいの「子ども」を対象に出版された本なのだろう。絵本並みに大きな文字が使われているが、表現や漢字は難しめだった。
読了日:10月14日 著者:ヨハネ・パウロ2世,カトリック中央協議会
イエスの言葉ブッダの言葉イエスの言葉ブッダの言葉感想
西のイエスが左、東のブッダが右という配置が素敵。趣旨の違う言葉ではないかと感じるものもあったが、確かによく似ていて驚いた。真理はひとつである、とブッダは言った。イエスブッダの言葉や態度に重なることが多いのは、奇妙な一致などではなく、二人が同じひとつの方向を見つめて立っていたからではないだろうか。
読了日:10月15日 著者:マーカス・ボーグ
日本人の知らない「クレムリン・メソッド」-世界を動かす11の原理日本人の知らない「クレムリン・メソッド」-世界を動かす11の原理感想
必要な情報のほとんどは公開情報から手に入れることができる。他の作家が語っているのを読んだことがあるが、北野氏の説明には説得力があった。異なる情報ピラミッドに属する複数のソースに当たるべし、という「第8の原理」は特に目から鱗だった。改行が極めて多く、文章も砕けていて、良くも悪くも読みやすいメルマガの書籍化のような本だった。
読了日:10月16日 著者:北野幸伯
チェルノブイリの祈り――未来の物語 (岩波現代文庫)チェルノブイリの祈り――未来の物語 (岩波現代文庫)感想
外の人間は、独裁国家を信じていた国民を「洗脳」の一言で片付けて哀れに思うことができる。しかし彼らの多くは、地面を失うような不安と空虚感に襲われたのだろう。教科書を読むだけでは感じられないことだ。我々は他人事だと思っているが、このようなことは独裁国家でなくても常に起こり得るのではないかと思わずにはいられない。「擲弾筒やガス室を手にした人間も、私たちを皆殺しにすることはできませんでした。しかし原子力を手にした人間なら……。」(204) 核兵器原発は何が違うのか。薄れ掛けていた危機意識が蘇った。
読了日:10月17日 著者:スベトラーナ・アレクシエービッチ
嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え
読了日:10月23日 著者:岸見一郎,古賀史健
こころ (岩波文庫)こころ (岩波文庫)感想
再読。高校生の時、レポート課題で読み込んだつもりになっていたが、当時の心には響かなかったのか、忘れていただけか、新鮮に感じる箇所が多々あった。毎度発見のあるものこそ良き文学だと聞く。疑問点を探していくようなやり方で読んだ初めての文学作品のため、今もあれこれと考えたくなった。そもそもこの書物は何なのだろう。出版物?遺書?先生の奥さんは生きているのか。飛び出していった「私」は家族とどうなって、その後どう暮らしているのだろう。
読了日:10月25日 著者:夏目漱石
イニシエーション・ラブ (文春文庫)イニシエーション・ラブ (文春文庫)感想
バラエティ番組でタレントが勧めていたのを思い出して手に取った。面白かったが、身構えて挑んだためにおよそ予想できてしまい、本書がもともと持っていたほどの破壊力は体感できなかったのが残念。どんでん返し系の作品の宣伝は、販促と読者を驚かせる意外性とのバランスが難しそうだ。
読了日:10月28日 著者:乾くるみ
お気に召すまま (新潮文庫)お気に召すまま (新潮文庫)感想
冒頭の重苦しさはどこへやら、正真正銘の喜劇。恋愛面で画策する女性登場人物を気に入ることはあまりないのだが、本作のロザリンドはとても魅力的だった。外見や心根が美しいだけでなく、何より機転が利いて聡明。企てが露見しないあたり完璧すぎていかにもフィクションなのだが、そこがシェイクスピアの魅力なのかもしれない。最近は「リアルさ」を売りにした劇をよく目にする。劇らしい劇も素敵ではないか。
読了日:10月29日 著者:ウィリアムシェイクスピア
遠藤周作で読むイエスと十二人の弟子 (とんぼの本)遠藤周作で読むイエスと十二人の弟子 (とんぼの本)感想
特に際立ったところもない庶民から選ばれたへっぽこの弟子たちが、師の逮捕に際して一目散に逃げた弱い彼らが、イエスの死と復活を境に強くなっていった、という流れが強調されている。弱かった弟子たちはイエスとともに死に、そして生まれ変わった(復活した)のだろう。遠藤周作に言わせれば、弟子だけでなくイエスもひたすらに弱い存在らしい。弟子はともかくイエスの方は、生前から立派な存在として描かれることが多いので、遠藤がキリスト教徒であることを考えると特異なように感じる。 使徒列伝の文章がやたらと面白かった。
読了日:10月31日 著者:遠藤周作,遠藤順子
キリストにならってキリストにならって感想
「『ああ、私がなお善を続けていくことができるものだと知ったならば……』『もし知ったならばしたいと思うことを、今なせ。そうするなら、おまえは安心を得るであろう』」(1巻25:8)
読了日:11月2日 著者:
火花火花感想
憧れの人のようになりたいと思っているのに、自分とその人とでは明らかに違っていて近づきようがなく、むしろ互いの歩む道はどんどん離れていく。決して暗い結末ではないが、そんな寂しげな印象を受ける物語だった。ラストはまるで「オチ」のような滑稽な内容でありながら、物語の大切な一部分として真摯に真剣に書かれており、著者の神谷魂を感じた。 文学音痴なので、純文学=昔の文豪という誤ったイメージを持っていた。これを機に最近の作品も読んでみたい。
読了日:11月7日 著者:又吉直樹
言葉尻とらえ隊 (文春文庫)言葉尻とらえ隊 (文春文庫)感想
何かを見聞きした時のモヤモヤは、自分でもその正体を掴みきれていないのに、他人に説明し難いものだ。この種のコラムには、それを的確な言葉で代わりに説明して貰える爽快感がある。それにしても、あれから2年、3年も経ったなんて!表紙が良い。
読了日:11月8日 著者:能町みね子
動物農場: 付「G・オーウェルをめぐって」開高健 (ちくま文庫)動物農場: 付「G・オーウェルをめぐって」開高健 (ちくま文庫)感想
再読。あるポーランド人がこう語ったらしい。「わが国とわれわれのことが書いてあるのだと思いましたね。『動物農場』も『一九八四年』も、二つともです。」(178)同感である。「わが国とわれわれ」を「全て人間が複数いるところ」と言い換えたい。 人間はある人物、国家、思想、体制等を批判し、自ら考えることができるつもりになっている。しかし実は愚かな動物たちのように、時間をかけて考え方や記憶を塗り替えられているに過ぎない気がして、恐ろしくなる。これら二作品で描かれるのは個人ではなく「人々」、巨大な群衆であるように思う。
読了日:11月8日 著者:ジョージオーウェル
カタロニア讃歌 (岩波文庫)カタロニア讃歌 (岩波文庫)感想
動物農場』『一九八四年』に引き続き読んだが、戦争のルポにしては劇的な動きが少なく、その二作に比べれば退屈した。しかし、それによって一般的に想像される「戦争」とスペイン内戦でオーウェルの経験した「戦争」とのギャップがよく表れているとも思える。また、呑気なスペイン人たちの様子がイギリス人らしい皮肉の効いた文章で愉快に描かれている。マニャーナ、マニャーナ!
読了日:11月17日 著者:ジョージオーウェル
家庭-愛といのちのきずな〈ペトロ文庫〉家庭-愛といのちのきずな〈ペトロ文庫〉
読了日:11月17日 著者:教皇ヨハネ・パウロ二世
読書について 他二篇 (岩波文庫)読書について 他二篇 (岩波文庫)感想
読書を勧めるキャッチコピーに「視野が広がる」や「批判的な思考力がつく」などというものは多い。しかしただ文字を上から下、右から左へと眺めるだけでは何も身につかず、そのどちらも達成できない。これは自分の読書を通して日々感じていることだ。ショーペンハウエルはそれに加えて、読み流さずに知識を手に入れたとしても、自発的な思索に至らなければ取るに足らぬソフィストだと指摘する。それにしても、「最近の○○はイカン」という話題は古今東西尽きないものだ。果たして人類は成長しているのかと疑ってみたくもなる。
読了日:11月18日 著者:ショウペンハウエル
南総里見八犬伝〈1〉妖刀村雨丸南総里見八犬伝〈1〉妖刀村雨丸感想
山本氏の絵を見たいばかりのジャケ買いだったが、内容が予想以上に面白く引き込まれた。登場人物が老若男女皆魅力的だ。このシリーズだけで終わらせるのは勿体無いので、児童書でないものも読んでみたい。
読了日:11月21日 著者:滝沢馬琴,浜たかや
『ふしぎなキリスト教』と対話する『ふしぎなキリスト教』と対話する感想
『ふしぎなキリスト教』は、本よりも先に批判サイトを読んだため著者もろとも毛嫌いしていたが、本書を店頭で見かけて批判本ならばと挑戦した。本書の著者は攻撃的な批評は一切していない。ある部分は褒めちぎり、ある部分は訂正し、ある部分は別の説や自分の考えを述べるなどしていて、得るものが多いだけでなく気分もよい読書だった。終盤のヴェーバー話は『ふしキリ』から離れてしまっていると思うが。7章の罪に関する部分は繰り返し読みたい。
読了日:11月23日 著者:来住英俊
霊操 (岩波文庫)霊操 (岩波文庫)感想
漠然と「祈りなさい」と言われても取り掛かりづらいが、ここまで具体的に示されれば、なるほど祈りに入りやすいような気がする。解題を読む限り、霊操は日常的に繰り返すというよりも特定の期間に集中して行うイベント的なものなのだろうか。「荒みのうちにある人は次のように考えるべきである。主は試練として自分を生来の能力だけに残しておかれ、敵の種々の先導や誘惑に自分の能力だけで抵抗するようにさせるのである」(265-266)というくだりには心を打たれた。
読了日:11月25日 著者:イグナチオ・デ・ロヨラ,門脇佳吉
ヨーロッパ文化と日本文化 (岩波文庫)ヨーロッパ文化と日本文化 (岩波文庫)感想
「われわれは〜だが、日本人は〜」という形でヨーロッパと日本の風俗を比較する。日本文化と言っても現代の日本とは異なるので、ヨーロッパだけでなく当時の日本を知るという意味でも興味深い。 驚いたのが6章1「(ヨーロッパの)食卓でフォークを用いる慣習は十七世紀になってから始まったもので、それまでは手づかみであった」という点。古くから現在まで続く箸の文化を誇らしく思った。日本は16世紀から既に堕胎天国だったのか。
読了日:11月25日 著者:ルイスフロイス,岡田章雄
ニセドイツ〈1〉 ≒東ドイツ製工業品 (共産趣味インターナショナル VOL 2)ニセドイツ〈1〉 ≒東ドイツ製工業品 (共産趣味インターナショナル VOL 2)感想
東独は世界史を学ぶだけでは謎に包まれた存在だ。知人が読んでいたので気になり、真面目な資料を読むより先に本書を手に取った。今では走るダンボールことトラバントがかわいくて仕方がない。ここまで興味が湧いたのは、駄洒落を織り交ぜたコミカルな語り口に依るところが大きいだろう。続きを読むのが楽しみだ。
読了日:11月26日 著者:伸井太一
南総里見八犬伝〈2〉五犬士走る南総里見八犬伝〈2〉五犬士走る感想
世四郎と音音(おとね)のインパクトが大きい。散り際に感動した後にビックリ展開が待っていたからだ。初めは何でもありかと天を仰いだが、思わず読み返しているうちに好きになった。 それにしてもかなりの血が流れる物語なので、何年生程度対象なのかが気になる。子供時代に読んでいたら夜魘されたと思う。
読了日:11月27日 著者:滝沢馬琴,浜たかや
南総里見八犬伝〈3〉妖婦三人南総里見八犬伝〈3〉妖婦三人感想
美男美女が盛り沢山の作品だ。特に少女と見紛う美少年が二人……中性的な人に魅力を感じるのは、サムライの時代から同じだったのか。
読了日:11月28日 著者:滝沢馬琴,浜たかや
南総里見八犬伝〈4〉八百比丘尼南総里見八犬伝〈4〉八百比丘尼感想
後半、犬士たちが集結してからの鮮やかな展開は読んでいて爽快だった。しかし玉梓との戦いはフェードアウトしたきりなのでモヤモヤが残る。他のバージョンでは語られているのだろうか?
読了日:11月29日 著者:滝沢馬琴,浜たかや
老境について (1950年) (岩波文庫)老境について (1950年) (岩波文庫)感想
慣れぬ歴史的仮名遣いのため、あまり内容が頭に入ってこなかった。現代仮名遣いのものを読み直す予定。
読了日:11月30日 著者:キケロ
夜と霧 新版夜と霧 新版感想
「意味」を見いだすことがいかに重要か、思い知らされた。生きる意味、苦しむ意味、耐える意味などを見失えば、人々は抜け殻と化していく。特に自殺を考える仲間に対して、本人の内部が無理なら外部から生きる意味を探し、待っているであろう家族や仕事の存在を訴えるところが印象的だった。外部に「意味」を見出し、それに縋って生き延びた者は、もしそのものが既に失われてしまっていたとしたら、いかほどの喪失感に悩まされるのか……。我々も気軽に「意味ない」と言う前に、「意味がない」ことの恐ろしさを心に留める必要がある。
読了日:12月12日 著者:ヴィクトール・E・フランクル
新装版 スヌーピーたちの聖書のはなし (講談社の実用BOOK)新装版 スヌーピーたちの聖書のはなし (講談社の実用BOOK)感想
スヌーピーが聖書的な要素を含んだ作品だったとは。スヌーピームーミンなど日本で人気のある海外出身のキャラクターたちは、その作品自体に当たってみると教訓や風刺がピリリと効いていることが多く、単なるイラストから想像していた性格との違いにも驚かされる。
読了日:12月12日 著者:ロバート.L・ショート
同時代を生きた偉人たちが国境越えて大激論!開催!世界史サミット同時代を生きた偉人たちが国境越えて大激論!開催!世界史サミット感想
入門書と言うよりも、世界史をある程度網羅的に勉強したことのある人が娯楽として読む本のような気がする。右も左も分からない人は面白く感じられないかもしれないが、一度覚えたが忘れてしまった私のような読者にはもってこいで、内容を思い出しながら新たに時代ごとの繋がりを知ることができる面白い本だった。登場人物たちは冗談を交えてまったりと雑談しているので、「サミット」「大激論」よりは座談会の雰囲気を感じた。ワタシャ・ダメダナが傑作。
読了日:12月14日 著者:浅野典夫
スノークのおじょうさんの名言集スノークのおじょうさんの名言集感想
名言というよりも、スノークのおじょうさんというキャラクターをよく表している場面を抜き出したような雰囲気。
読了日:12月24日 著者:トーベ・ヤンソン
ある巡礼者の物語 (岩波文庫)ある巡礼者の物語 (岩波文庫)感想
客観的な伝記の形式になっているので本書の方が読みやすい筈なのだが、『霊操』の方が面白く読み進めることができた。理由は分かっている。そのような目的で書かれた書ではないと知りながらも、まるで自らの人生を誇って自慢しているかのように感じてしまうからだ。自分の心の汚さを暴き戒められたような心地で読了した。
読了日:12月25日 著者:イグナチオデ・ロヨラ
残像に口紅を (中公文庫)残像に口紅を (中公文庫)感想
小説の文面に使える音が減っていくだけでなく、物語内でも名前が失われて形容されなくなったものは消失するという発想が面白い。ある人が「確かに草の名称を知っていても実益は少ないが、道端に生える様々な植物を一括りに『雑草』と捉えている人と、それぞれの名称を知っている人とでは、生への感謝が違う」と仰っていたのを思い出す。親しみをはじめとする人の万物への働きかけは、名を知ることから始まるのだろう。指で「これ」と示すことのできない文章の世界では尚更だ。 語彙の貧弱さから本作の登場人物のように言葉に詰まる自分が情けない。
読了日:12月26日 著者:筒井康隆
図説 地図とあらすじでわかる! イエス (青春新書INTELLIGENCE)図説 地図とあらすじでわかる! イエス (青春新書INTELLIGENCE)感想
エス及びキリスト教にまつわる基本的な事柄について網羅的に概説しており、手軽で優れた入門書である。地図も都度掲載されており、いちいちページを捲る必要がないので読みやすかった。巻末に全体を見渡せる地図があればより便利だったと思う。
読了日:12月28日 著者:船本弘毅
バチカン―ローマ法王庁は、いま (岩波新書)バチカン―ローマ法王庁は、いま (岩波新書)感想
ファッション誌のコラムにでも載っていそうな語り口で読みやすい。ヨハネパウロ二世の病、逝去とその後を継ぐ新教皇に関わる人々のざわめきが特に興味深かった。現教皇フランシスコ(ベルゴリオ枢機卿)の当選は青天の霹靂だったと聞いていたので、彼がラッツィンガー枢機卿と一騎打ちになったという説には驚かされた。
読了日:12月29日 著者:郷富佐子
新装版 たのしいムーミン一家 (講談社文庫)新装版 たのしいムーミン一家 (講談社文庫)感想
飛行おにの魔法を受けて、ムーミンの心からスナフキンが旅立ってしまった悲しみが消え去り、「また会える日をまちうける心」に変わった場面がとても良かった。常にそういう受け止め方をできる人になりたいものだ。ごちそうのたっぷり乗ったテーブルが降ってきたとき、当のスナフキンはどのような反応をしたのだろう。 本作で最も衝撃的だったのは、彼らがラジオのような人間くさい電子機器を持っているばかりか、それが「アメリカ」からの電波を拾うことである。
読了日:12月30日 著者:トーベ・ヤンソン

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