2017年04月

4月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:4005
ナイス数:75

ゴシックとは何か―大聖堂の精神史 (ちくま学芸文庫)ゴシックとは何か―大聖堂の精神史 (ちくま学芸文庫)感想
大開墾運動のさなか、人々が失われた聖なる「森林」を求めて愛したのがゴシック建築、そして聖母(ノートルダム)である。彼らの惜しみない献金と権力者たちの出資があり、ゴシックは大きく発展したが、宗教改革の時代には軽蔑され、18世紀末の復権まで長い迫害の時代が横たわっている。ゴシックの特徴は「異種の面が排除しあうことなく混在している」点にあり、例えば合理と非理性、異教的なものや地域的なもの、複数の時代の建築様式などが平然と共存している。(229)区別・線引きを好む16世紀の合理主義には受け入れ難かったのだ。
読了日:04月04日 著者:酒井 健
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年感想
これが初めての春樹長編作品。先入観に反して、哲学書に見られる一見単なる言葉遊びかと思われるような難解な文章も、荒唐無稽な世界観もない。台詞等は確かに私自身の個人的な「現実」には則さないものの、ストーリーが予想よりも現実に根差していた。(ファンによれば、その点本作と『森』は例外的らしい)明らかにされぬままになった問題が多い割に、すっきりと纏まっている印象を受けた。また『日出る国の工場』の時も書いたが、比喩表現が詩的かつ的確で胸を打つ。ちなみに本作も杏さんの紹介で興味を持った本。
読了日:04月10日 著者:村上 春樹
マイ・ロスト・シティー (村上春樹翻訳ライブラリー)マイ・ロスト・シティー (村上春樹翻訳ライブラリー)感想
他館から『グレート・ギャッツビー』が届くまでの繋ぎとして。滑らかで心地よく、先を読みたいと引き込まれる文章で、通奏低音のように横たわる寂寞感、孤独感も好みだ。しかし読後感はなぜだか「とりあえず読み終わった」という感じで、強く印象に残ったものが特にない。自分にとって、今、読むべき本ではなかったのかもしれない。「残り火」「氷の宮殿」「失われた三時間」が好き。
読了日:04月10日 著者:フランシス・スコット フィッツジェラルド
はじめての短歌 (河出文庫 ほ 6-3)はじめての短歌 (河出文庫 ほ 6-3)感想
音や品詞の数などの論理よりも、詩らしいニュアンス、全体の雰囲気への言及に重きを置いている。文章の様子がややエッセイに近いのはそのためだろう。詩歌の添削は批判されやすいが、本書は逆に「改悪例」を挙げることでその問題を回避している。素人目にも「ダメな歌」なのが明らかで面白い。ちなみに本書は解説者によれば「ビジネス書」だそうだが、本編を読んでいる間は全くそのようには感じなかった。解説は最後についているから強烈な印象を残すが、あくまで他人の意見である。引っ張られすぎないようにしたい。
読了日:04月11日 著者:穂村 弘
短歌はプロに訊け!短歌はプロに訊け!感想
歌集というものは、面白い歌がいくつも載っていていいのだが、せっかちなので「早くたくさん読みたい」という気持ちが抑えられず、ひとつの歌を充分に味わう前に次に進んでしまいがちである。本書は次のテーマに移る前に数ページの批評対談が入るので、ほどよいペースで読むことができた。穂村氏が『はじめての短歌』よりも詳細に、音数など短歌の原則を語っている。その割に彼が評価する歌に原則に反しているものが多いのは、それらがあえて原則を破る価値のある優れた歌であったからなのだろう。お気に入りはすず氏、本下いづみ氏、ねむねむ氏。
読了日:04月14日 著者:穂村 弘,沢田 康彦,東 直子
本当はちがうんだ日記本当はちがうんだ日記感想
書店にてぱらぱら覗いて「あだ名」を読み、あまりの面白さに一人でずっとニタニタしてしまった。帰って読み返してもやはり面白い。どこを取っても言い訳がましく、ものすごくめんどくさい。エッセイから浮かび上がるのは情けない人物像なのに、不思議な魅力に溢れている。「エッセイ」というジャンルをあまり読んでこなかったのだが、著者のエッセイならば全て読んでみたい気がする。
読了日:04月14日 著者:穂村 弘
穴 HOLES (ユースセレクション)穴 HOLES (ユースセレクション)感想
小学校高学年〜中学生向けの児童書。絶望的と思える状況なのに主人公がまっすぐ進んで行くのは、不運と一緒にひいひいじいさんから受け継いだ強さなのだろうか。ゼロがいなければ、その強さは発揮されなかったような気もする。今回初めて知った著者だが、米国では大人気の児童書作家で、日本でも英語学習のお供として親しまれているらしい。もう一、二作読んでみたい。
読了日:04月14日 著者:ルイス・サッカー
バッハの生涯と芸術 (岩波文庫)バッハの生涯と芸術 (岩波文庫)感想
バッハは存命中、作曲家としてのみならず演奏家や教育者としても尊敬を集めたが、流行に符合しなかったためか大衆の人気はさほどではなく、死後は殆ど忘れ去られていた。広い再評価は死後約80年、メンデルスゾーンによる公演まで待たねばならなかった。そんな中でバッハがいかに素晴らしい音楽家であったかを熱心に宣伝していたのが本書の著者フォルケルである。自身も音楽家であるため、かなり具体的な内容になっている。大衆向けというよりは、音楽を解する人々がバッハをよく知らないのを「勿体ない」と感じて教えているような印象を受けた。
読了日:04月15日 著者:J.N. フォルケル
カラマーゾフの兄弟〈第1巻〉 (岩波文庫)カラマーゾフの兄弟〈第1巻〉 (岩波文庫)感想
一台詞の長さが常識の範囲内だからか『罪と罰』よりも読みやすいが、やはり誰がいつどうしたのか、台詞では誰が誰に喋っているのかなど、振り返りつつ読まなければすぐに話を見失う。半分ほど読んだところで知人にあらすじを尋ねられ、一体なにを語らんとする物語なのか、ストーリーすらも未だ掴めていないことに気づいて愕然とした。それにしても本作は、続きを読みたいと思わせる魅力に満ちている。ただし冒頭に解説を置くのは心底勘弁してほしい。
読了日:04月22日 著者:ドストエーフスキイ
女子の人間関係女子の人間関係
読了日:04月25日 著者:水島広子
文体練習文体練習感想
一年半ほど前に読んだ筒井康隆の『残像に口紅を』もそうだったが、文章を書くこと自体を実験にしてしまった本というのは非常に興味深い。エンデの『はてしない物語』も「物語」を問うている点で構造的に近いかもしれない。もっとこういう種類の本を読んで見たいが、どうやって探せばいいのだろう……。 本書は訳者を単に「訳者」とするのが申し訳なく感じるほど、翻訳に依るところが大きい。日本語に依存する親父ギャグを外国語に訳すのは難しいだろうが、言葉と文の変奏曲たるこの作品には全編にわたって同じ困難が付きまとうからだ。
読了日:04月27日 著者:レーモン クノー
新装版 ハゲタカ(上) (講談社文庫)新装版 ハゲタカ(上) (講談社文庫)感想
知人が好きだと言っていたので読んでみたが、なるほどすごい。経済に弱い私のような人が読んでも面白いし、勉強になる。勉強というのも、用語を知れるという類のものだけではない。どのように金が動くのかが、理論ではなく人間の活動を見ることで感じられるのだ。経済小説といえば池井戸潤を想起するが、ウチとソトの区別が明白なイメージが(あまり読んだことはないが)ある池井戸作品に比べて、本作は外資系ファンド、銀行、ホテルの三つの視点をそこそこ公平に淡白に描いているので、それぞれの事情や思惑に着目しやすい。
読了日:04月29日 著者:真山 仁
大聖堂 (村上春樹翻訳ライブラリー)大聖堂 (村上春樹翻訳ライブラリー)感想
村上春樹への先入観を払拭しようシリーズ第三弾。『多崎つくる』で村上氏の文章は好きらしいと分かったが、どうも文学作品の趣味は合わないらしい。先日読んだフィッツジェラルドも、今回のカーヴァーも、「他人の身に降りかかった出来事」という感じが強く、あまり響かなかった。訳による文体が良いので立ち止まらずに読み進められたが、「あまり立ち止まる場所がなかった」とも言えるのである。とはいえ「ささやか…」「大聖堂」はかなり良く、「コンパートメント」「列車」は一気に転換する終盤が強く印象に残った。
読了日:04月30日 著者:レイモンド カーヴァー

読書メーター

2017年03月

2017年3月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:4514ページ
ナイス数:67ナイス

吾輩は猫である (岩波文庫)吾輩は猫である (岩波文庫)感想
解説に「少しぐずぐずといい淀んだりしているとたちまちあとがつかえてしまいそうな、溢れるように湧き出す豊かな言語と歯切れのいい文体」とあるが、まさにその通りである。しかも愉快で、友人が碁石を打った時の「迷亭先生今度はまるで関係のない方向へぴしゃりと一石を下した」(438)という一文にすら、別段面白くもない内容なのにふふっとしてしまう。口語とはいえ漱石の日本語は古さ、ひいては格調高さを感じさせるため、その文体でありがちな日常がコミカルに描かれているというギャップがたまらないのだ。恐らく現代人の特権である。
読了日:3月4日 著者:夏目漱石
最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)
読了日:3月4日 著者:二宮敦人
考える短歌―作る手ほどき、読む技術 (新潮新書)考える短歌―作る手ほどき、読む技術 (新潮新書)感想
「作る手ほどき、読む技術」。口耳に心地よい副題である。未熟のせいか、私はどうも「字余り」に過敏なようで、添削後でも収まりの悪さを感じる歌がいくつかあった。それでも殆どが俵氏のアドバイスに磨かれて輝きを増した歌ばかりである。紹介された歌の中では「体温計くわえて窓に額つけ『ゆひら』とさわぐ雪のことかよ」(穂村弘)「『雪が見たい』『なら見に来れば』簡単に行かれっこない受話器の向こう」(菜穂、俵添削)などが気に入った。今回初めて触れた現代短歌との相性は意外にいいかもしれない。(雪が好きなだけか?笑)
読了日:3月5日 著者:俵万智
日出(いず)る国の工場日出(いず)る国の工場感想
モデルの杏さんがラジオで紹介しているのを聴いて読もうと思った本。筆者はまだ30代、出版は『ノルウェイの森』より少し早く、消しゴム工場の製品が「西ドイツ」に輸出されていた頃の作である。春樹作品はなかなか難しく自分には早いと感じることが多いが、本作は軽快かつゆるっとしていて終始面白かった。「です・ます」と「だ・である」が程よくミックスされた文章も心地よい。優れた文学者はみな喩えに秀でているものだが、なるほど村上春樹は上手いと思う表現がいくつもあった。CD工場の「凄さ」が説明不可能だというくだりなど。
読了日:3月5日 著者:村上春樹
舞姫・うたかたの記―他3篇 (岩波文庫 緑 6-0)舞姫・うたかたの記―他3篇 (岩波文庫 緑 6-0)感想
慣れぬ雅文体にうんうん唸りながら読んだ挙句、内容にあまりついていけなかったので、これからは現代語訳に目を通してからにしようと反省。これまで何度も触れてきた「舞姫」と、「うたかたの記」「そめちがへ」が面白かった。本書に収録されている西欧を舞台とするエリートっぽい(理解の浅さと学の無さを露呈…恥ずかしい)作品の中で「そめちがへ」は異色の一篇だが、同作は内容のみならず文体も一味違い、永遠のような読点地獄であった。昔から古文は苦手だったが、集中力を途切らせず読めるようになりたい。
読了日:3月8日 著者:森鴎外
改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学 (単行本)改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学 (単行本)感想
具体的な投資方法を伝授する本ではない。生き方、考え方を根本からひっくり返すよう促す。金持ちになるためには「働いて稼ぐ」ものだと信じているラットレースの中の人々(著者の対極で大多数)の思考や行動が寸分違わず自分と同じだった。実学偏重は嘆かわしいことだと信じているのもあり、著者が学校教育こそ「お金のために働く」人々を生み出す元凶とするのには納得しかねたが、それでも「今すぐ、お金について学び始めろ」という強いメッセージに気圧された。「キャッシュフロー」のスマホ版を試した。シンプルな人生ゲームだがそこそこ楽しい。
読了日:3月10日 著者:ロバートキヨサキ
石川くん (集英社文庫)石川くん (集英社文庫)感想
読みながらニヤニヤが止まらない、心のこもった(!)ラブレター。横書きもフォントも文体もイラストもいい味を出していて、「言いまつがい」を生んだほぼ日での連載と知り、なんとなく納得。「真剣な顔で石川くんのことをいじめていきたいな」と綴る著者であるが、このように「石川くんいじめ」は啄木の歌を引用したり、もじったりしたものが多い。頻繁に槍玉に上げられるのは「ローマ字日記」である。歌の雰囲気とはかけ離れた啄木の実生活を知っても不思議と嫌な気持ちにならない、それどころか益々愛おしくなるのが彼の魅力かもしれない。
読了日:3月10日 著者:枡野浩一
すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)
読了日:3月11日 著者:オルダスハクスリー
紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている: 再生・日本製紙石巻工場 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている: 再生・日本製紙石巻工場 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)感想
震災6年目に際して、あのとき確かに生きていた方々、今も様々な想いを抱きしめて生きているであろう多くの方々に思いを馳せながら文庫で再読。単行本とは紙質がまったく違うことに改めて驚く。
読了日:3月11日 著者:佐々涼子
文系ビジネスマンでもわかる数字力の教科書文系ビジネスマンでもわかる数字力の教科書
読了日:3月11日 著者:久保憂希也
ノートル=ダム・ド・パリ(上) (岩波文庫)ノートル=ダム・ド・パリ(上) (岩波文庫)感想
ミュージカルを観たので。『レ・ミゼラブル』はいつまで経っても主人公が現れないので挫折してしまったが、本作もなるほど同じ作者によるもので、少し話が進んだと思えばすぐに建築やら街並みやらの話に戻ってしまう。しかしキリスト教建築(特にゴシック様式)が好きなので、レミのものとは異なりこちらの脇道部分(?)はとても興味深かった。 中世というと人々が信心深く、従って誰もがいつくしみと愛に満ちていた(そのために努力していた)ようなイメージを持っているが、結局いつの時代も人間は弱く、群衆は残酷なものなのだ。
読了日:3月20日 著者:ユゴー
ノートル=ダム・ド・パリ(下) (岩波文庫)ノートル=ダム・ド・パリ(下) (岩波文庫)感想
まだ断片的にしか観ていないがディズニー版とは多くの登場人物の位置付けが根本的に異なるようだ。「鐘」は、他のディズニー作品ほどではないとはいえ、やはり善人と悪人の明白な線引きを加えざるを得なかったのだろう。印象が変わるのはやや残念だが、原作の配置の方が好みだ。 母の命懸けの努力を無に帰したエスメラルダの場面だけは、どうにも感情の流れを断ち切られたような気がしてならない。母との再会と刑執行を両立させようとした結果なのか、それとも決して鎮火されぬ愛を描くために必要だったのだろうか。
読了日:3月21日 著者:ユゴー
宗教ってなんだろう? (中学生の質問箱)宗教ってなんだろう? (中学生の質問箱)
読了日:3月22日 著者:島薗進
世界音痴世界音痴感想
日経歌壇を追い始めた時期と「100分de名著」の穂村氏登場回(中原中也特集)が重なり、彼の纏っていた不思議な雰囲気に興味を持って評価の高いエッセイを読んだ。歌を読めば「この人の見ている世界は私が見ているものとはまったく違うのだろう」と感じるのだが、他方エッセイでは、まるで自分のことが書かれているかのような強い共感を抱く。特に「まだ眠ってるの?」は自分そのもので笑い転げた。
読了日:3月26日 著者:穂村弘

読書メーター

2017年02月

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2017年2月の読書メーター
読んだ本の数:22冊
読んだページ数:5220ページ
ナイス数:63ナイス

似ている英語似ている英語
読了日:2月2日 著者:おかべたかし
日本会議の研究 (扶桑社新書)日本会議の研究 (扶桑社新書)
読了日:2月4日 著者:菅野完
女子学生はなぜ就活で騙されるのか 志望企業全滅まっしぐらの罠 (朝日新書)女子学生はなぜ就活で騙されるのか 志望企業全滅まっしぐらの罠 (朝日新書)感想
『女子学生は〜』というタイトルでは勿体ない。女子学生の目には止まるだろうが、男子学生が自分には関係のない本だと思い込んでしまうだろう。(実際に宣伝効果としてどうだったのかは見当もつかない) 本書は学生の持ってしまいがちな「就活の常識」が、周りから植え付けられた先入観や古い情報、必ずしも学生に親身ではない就活サイトや採用する企業の商業的な思惑、勘違いなどから構成されがちであることを指摘している。就職の歴史上、女子学生はことさら気をつけねばならないが、決して女子学生にしか当てはまらないことばかりではない。
読了日:2月6日 著者:石渡嶺司
Sherlock: A Study in Pink Audio Pack (Scholastic Readers)Sherlock: A Study in Pink Audio Pack (Scholastic Readers)感想
以前読んだリーダーズがあまりにも退屈だったので食わず嫌いしてきたが、本書は楽しめた。文章が易しくお上品になっているので、字幕にかじりついてドラマを観ている身としては「ああ、あれがこうなるのか」と感心する。元のままでは言葉足らずと思ってか、説明的になった台詞もある。なぜかついでにジョンの射撃の腕も上がった。
読了日:2月6日 著者:PaulShipton
新装版 ムーミン谷の冬 (講談社文庫)新装版 ムーミン谷の冬 (講談社文庫)
読了日:2月7日 著者:トーベ・ヤンソン
新装版 ムーミン谷の仲間たち (講談社文庫)新装版 ムーミン谷の仲間たち (講談社文庫)感想
各章ごとに登場人物や時間設定が異なる短編集である。穏やかな「しずかなのがすきなヘムレンさん」が一番好き。ムーミン一家が「クリスマス」を何か恐ろしいものの到来と勘違いし、「クリスマスさま」への贈り物まで用意する「もみの木」も、読者である人間の風習とムーミンの世界が絶妙に溶け合っていてほっこりした。が、続く解説にて訳者が特定の作品を名指しして「どうやら失敗作」などとのたまっているのは何様なのだろう。その作品も気に入っていたので、極めて心外だった。
読了日:2月7日 著者:トーベ・ヤンソン
新装版 ムーミンパパ海へいく (講談社文庫)新装版 ムーミンパパ海へいく (講談社文庫)
読了日:2月9日 著者:トーベ・ヤンソン
新装版 ムーミン谷の十一月 (講談社文庫)新装版 ムーミン谷の十一月 (講談社文庫)
読了日:2月10日 著者:トーベ・ヤンソン
聖書の英語の物語 (生活人新書)聖書の英語の物語 (生活人新書)感想
欧米の記事や著名人の発言から、旧約聖書を背景に持つ言い回しなどを紹介する本。「石に書かれる」と絶対的な掟、「壁に書かれる」と不吉の前兆、などなど。海外新聞の類をほとんど読まないので実態は知らないが、グローバル化と他宗教への配慮が、読み手の聖書知識を前提とするこのような言い回しを公共メディアから消していってしまうようなことはあり得ないだろうか?もしあり得るならばそれは、英語を使って生きる人々の多様性への優しい心遣いだと感心すると同時に、ある豊かな文化の自己犠牲でもあるので、とても残念に思う。
読了日:2月11日 著者:石黒マリーローズ
Sherlock: The Hounds of Baskerville Audio Pack (Scholastic Readers)Sherlock: The Hounds of Baskerville Audio Pack (Scholastic Readers)
読了日:2月16日 著者:PaulShipton
Sherlock: The Sign of Three (Scholastic Readers)Sherlock: The Sign of Three (Scholastic Readers)感想
ピンクからバスカヴィル、三の兆候へと、ひとつずつレベルが落ちていくのは何故なのだろう。レベル2となると、さすがに物足りなかった。シャーロックの少し寂しげな表情を拾ってくれたのは嬉しい。
読了日:2月17日 著者:FionaBeddall
人生論 (岩波文庫)人生論 (岩波文庫)感想
トルストイはマイルールで「未読でも買っていい作家」に分類されていたのだが、本書に関しては軽率だったと感じた。冒頭の科学者批判と苦痛を主題とする終盤は興味深く読めたが、それ以外の大部分は三歩進んで二歩下がるような同じ主張の繰り返しが続き、疲れて読むのにかなりの日数を要した。読むのが早すぎたのだと思う。
読了日:2月18日 著者:トルストイ
謎解きはディナーのあとで 2謎解きはディナーのあとで 2感想
軽快、軽妙とはまさにこのシリーズのための言葉のように思う。第一巻を最後に読んでから半年近いが、各巻、各編の繋がりはとても緩いので基本的にどこから読んでも同じように楽しめる(影山の暴言がヒネリを加えてエスカレートしていく様子などは順に読む楽しみだが)。短いながらも構成に一工夫仕込んであり、しかも続編への期待も残す最終話「完全な密室などございません」が一番好き。 同じ名前の別人が間を空けずに登場して混乱を招くのと、影山の敬語が時々おぼつかないのは何とかしてほしい。
読了日:2月18日 著者:東川篤哉
謎解きはディナーのあとで 3謎解きはディナーのあとで 3
読了日:2月19日 著者:東川篤哉
わが町・新宿わが町・新宿感想
紀伊國屋書店創業者による個人の回顧録でありながら、新宿史に深く根ざしている。とはいえ時系列順の章立てでもなければ、文章が理路整然としているわけでもなく、曖昧な記憶に頼った記述もあるようで、やはり手記の類である。
読了日:2月20日 著者:田辺茂一
小僧の神様―他十篇 (岩波文庫)小僧の神様―他十篇 (岩波文庫)感想
恥ずかしながら志賀直哉初読。子供時代、日本語の手本として冒頭部の書き写しをさせられた「城の崎にて」も収録。数多いる名手の中でなぜ志賀が手本に選ばれるのかは未だ分からないが、一文が短く簡潔だからだろうか、とても読み易かった。外国語から翻訳された文章とは対極的な文体だと感じた。 また内容も読んでいて心地良く、普段特に意識することのない人間というものへの好感が、自分の奥底からじんわりと溢れ出てくるような気がした。
読了日:2月22日 著者:志賀直哉
啄木詩集 (岩波文庫)啄木詩集 (岩波文庫)感想
『あこがれ』からの詩は学のない者にはあまりに難しく完全にお手上げであったが、「海の怒り」の頭に出てくる「一日(ひとひ)のつかれを眠りに葬(はふ)らむとて」という表現だけは強く印象に残った。 「『あこがれ』以後」の章にはお気に入りが多数。寂しさの上品な吐露とも取れる雰囲気に胸が疼いた「蟹に」「馬車の中」「泣くよりも」の三作と、「祖父」「拳」が好き。また「白い鳥、血の海」の持つ不気味な不可解さはいかにも夢の世界なのだが、なぜか繰り返し読んでしまう。
読了日:2月22日 著者:石川啄木
一握の砂・悲しき玩具―石川啄木歌集 (新潮文庫)一握の砂・悲しき玩具―石川啄木歌集 (新潮文庫)感想
近頃では物語の中で起こるイベントがいかに劇的であるかが、作家の腕を測る重要な物差しの一つとなっている。しかし他愛ない日常の中で気づかぬ間に流れ去ってしまう心の機微をどうにか掬い上げ、言語化することこそが文学者の務めであると思う。『一握の砂』の序文には「斯ういふ様な想ひは、俺にもある」と、啄木の歌への共感が綴られている。書かれているのはありふれた心の動きであるのに、自分で言葉にしたことはないので、とても美しく新鮮なものとして飛び込んでくるのだ。「飴売のチヤルメラ聴けば うしなひし をさなき心ひろへるごとし」
読了日:2月23日 著者:石川啄木,金田一京助
紙つなげ!  彼らが本の紙を造っている紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている感想
震災に立ち向かう職人たちのドキュメンタリーとしても胸を打たれたが、本を見るための視点を新たに与えられた衝撃が大きい。145頁の「講談社が若干黄色、角川が赤くて、新潮社がめっちゃ赤。…出版社は文庫の色に『これが俺たちの色だ』っていう強い誇りを持っているんです」という文章を読んで、慌てて本棚に飛びついた。岩波は最も美しい表紙デザインを持ち、角川のはやたらとピンクで、新潮は字が大きくてスピンが付いている……というだけではなかった。これまで気にしたこともなかったが、確かにページの紙の色も質感も全然違って、面白い。
読了日:2月25日 著者:佐々涼子
新聞力: できる人はこう読んでいる (ちくまプリマー新書 263)新聞力: できる人はこう読んでいる (ちくまプリマー新書 263)感想
このところ新聞を開くのが億劫になっているので、読みたくなりそうな本を。記事を写したり、纏めたり、再構成したりする新聞ノートは色々なところで推奨されているが、記事に対する質問を書き留める「質問力ノート」というアイデアに唸った。「漠然と新聞記事を見るのではなく、池上彰さんが目の前にいたら、何を聞こうかという姿勢で、つねに質問を考えながら読んでいく」(55)むむむ、なるほど〜〜……。一家に一人の池上氏、是非、欲しい。
読了日:2月25日 著者:齋藤孝
本屋稼業本屋稼業感想
「ボクは本屋の景色が好きなんだ」という田辺の想いは、前川國男に本社ビルの設計を依頼するという無茶の大きな原動力となった。この言葉、とてもよくわかる。本が好きなのは勿論のこと、本の並ぶ空間がたまらなく好きで、中でも紀伊國屋の空間は他の有名チェーンのそれより私の肌に合う。今でも田辺の「本屋好き」が息づいているからなのかもしれない。 彼を経営面で支えた松原に関して印象に残ったのが洋書販売の取っ掛かりだ。洋書は欲しいが予算がないという大学に、自ら寄付をすることで土壌を作った。流れに乗るだけが商売ではないのだ。
読了日:2月25日 著者:波多野聖
(046)「本が売れない」というけれど (ポプラ新書)(046)「本が売れない」というけれど (ポプラ新書)感想
『…けれど、実はそうでもない』と続くのではない。実際に、既存のルートでは最早売れないのだ。だが幻の「読書離れ」やアマゾン、ブックオフ、図書館、書店の大型化、電子書籍再販制度等々、いずれかを敵に仕立てて非難したところで、売れるようにはならない。すべてがもつれ合って悪循環の中にあるのだ。人や地域と同様に書店も「ミドルクラス」が激減した、という指摘にハッとした。出版問題を考える時、つい流通と書籍にばかり注目してしまうが、本は読者、即ち人間のためにある。出版業界の内部では決して完結しない、世の中の問題なのだ。
読了日:2月27日 著者:永江朗

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